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[コメント] 劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE(2004/日)

「あの親にしてこの子あり」というべきか、「あのテレビシリーズだったらこうなるか」というべきか、とにかくそういう意味ではまずは納得できた作品。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 色々言う前にまず本作の構造を考えてみたい。

 平成ライダーシリーズはテレビ放映半ばで劇場版が作られるため、劇場版では色々工夫が凝らされる。この時点までには『仮面ライダーアギト ProjectG4』(2001)はテレビシリーズの中の1エピソードとして。『仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』(2002)はもう一つのエンディング。『仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』(2003)は完全なるパラレルワールド。そして本作の位置づけは、テレビ版のエンディング後の話として。色々バラエティに富んだ設定で楽しませてくれる。

 本作の場合は、平行して放映しているテレビシリーズは中盤にさしかかったばかりなので、エンディング後と言うのはネタバレを含んでいると言うことでもあり、なかなかに挑戦的な作品だった。難しいものに敢えて挑もうとしたスタッフの努力だけは認めてもいいだろう。

 それでまだ作品が終わってないのに終わった後の話が成り立つのか?これは挑戦だったと思うのだが、はっきり言えば、物語としてまるで成り立ってなかった。

 テレビ版でで四人存在するライダーの一人、仮面ライダーカリスの始は特別な存在で、主人公のブレイドを含めた三人のライダーとは立ち位置が全く異なる。彼は人間ですらないジョーカーと呼ばれる特別な存在であり、バトルロイヤルが終わった時点で人類を含めたすべてのアンデッドを滅ぼすために存在した。つまり彼が生き残ることは人類の滅亡を意味することになる。

 それで始をどうするのか。が物語中盤から後半にかけての見所だった訳だが、映画版ではオープニング時点でブレイドによってカードに封印されて人類は存続した。と言う設定になっている。

 結果として、本作は主役の一人を欠いたまま話を展開させねばならない事になる。ここで演出されるべきは、始のいないこの世界で折り合いをつけて生きていかなければならない、残された人間の喪失感と、それを乗り越えたところでの感動的な再会だろう。

 しかし、本作の物語は有象無象のライダーたちに振り回されっぱなしで終わるだけの物語に成り下がった。デウス・エクス・マキナ的に最後にちょっとだけ始が出て、全てをあっけなく終わらせて去っていった。それだけ。

 キャラにおいても本作のTVシリーズはキャラの滑舌の悪さが不評の原因の一つだったが、それ以上に素人臭い新キャラ出してどうするんだ?

 本作の印象は「とにかくいっぱいライダーが出てきて、喧嘩してるうちにいつの間にかでっかい敵が出てきて終わった」と言う感じ。これだったらまだTVシリーズの仮面ライダーディケイドに出てきた前後編の「剣」のエピソードの方がまだすっきりしてたくらい。いっそ完全に割り切ってこの物語を映画にした方がましな程度の物語だった。

 脚本を勤めた井上敏樹はむらっ気の多いライターとして知られるが(そのため傑作もいくつかあるが)、その最も悪い部分が出てしまったとしか思えない。少なくとも金取って見せられるような作品には到底思えない。

(評価:★2)

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