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[コメント] スター・ウォーズ 帝国の逆襲(1980/米)

そして、神話へ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 私がこの作品を最初に観たのは劇場ではなくTV放映でだった。で、正直な話を言えば、「まとまりのない作品だな」だった。物語が一貫せずに細切れだし、終わり方もいかにも「続く」。既にダース・ベイダーの父親宣言についても知っていたので、さほど衝撃はなし。更にあれだけの大勝利を遂げたくせに、共和軍が弱いこと弱いこと。ストレス溜まりまくり。  だから本作がスター・ウォーズ・サーガの重要な一片であることは確かだが、長いことこれは私の中では「通り道」でしかなかった。

 だけど、数年前にあるイギリス人と知り合った。この人がかなりの映画好きで、しかももの凄い『スター・ウォーズ』ファであることから、日本語英語チャンポンで初対面ですっかり『スター・ウォーズ』話で盛り上がり(周囲をドン引きさせたのだが)、その中でEP4を別にして、一番好きな作品は何か?と言う話になった時、私は『ジェダイの復讐』を推し、彼は絶対に『帝国の逆襲』だと強調した…はっきり言ってこの議論には全く歯が立たなかった。私が一つ一つ本作の弱点をいう度に、全部完璧に答えられてしまったのだ。その圧倒的な知識量と細部の描写力にこの時本物のスター・ウォーズファンには到底敵わない事を痛感させられてしまった。

 実は本作の物語が全て細切れにされているのは、「細部を読み込め」というメッセージであり、その描写不足こそが実は本作にミステリアスな影を与えているのだ。『スター・ウォーズ』が単純明快な物語であるならば、それを前提にして、物語に深みを与えるため、そして宇宙の広さというものを知らせるためだったという。この作品は狭い物語ではなく、銀河全体を包括しての戦争を描く物語であるのだから、一つ一つのエピソードを細かく描写するよりも、こうした方が広がりを感じさせられるはず。勿論それは結構な賭けではあるのだが、観ている人がこれに付いてくるはず。という自信に裏打ちされたものであり、事実多くのファンがしっかり食らいつき、そのファン達の草の根の活動によってどんどん新解釈が加えられることとなった。

 『スター・ウォーズ』は神話だと言われるが、それは1話目EP4だけでは全く足りなかった。むしろマニア受けする本作の存在によって、それが明確化しはじめたのが始まりだったのだ。『スター・ウォーズ』が映画を越えたものとなる転換点を作り出したのが本作だったと言うことになる。

 その後、DVDのBOXを予約買い。改めて本作を観て、完璧に自分の考えを変えるに至った。これは確かに素晴らしい。本気で取り組みたいと思わせるくらいに完璧に…私はやらないけど。

(評価:★5)

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