[コメント] サイドウェイ(2004/米=ハンガリー)
映画を見終った人むけのレビューです。
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中年二人組の小旅行と恋愛模様をユーモラスに描いたロード・ムービー。
旅そのものを主題にした映画は結構多い。日本でも股旅ものという時代劇の定式があり、各地の風光明媚な土地を愛でつつ、ストーリーを進行させていくパターンがある。
一方ハリウッドの場合、多くの場合は旅というのはただ旅で終わるものではない。むしろアメリカ産ロード・ムービーは私の大好きな主題である“家族を作る”という副題を内包している場合が多い。例を挙げる、それこそ山ほどあるが、つい最近も『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)という素晴らしい作品が出たばかりで、この主題はまだまだ崩れていない。私がアメリカ産ロード・ムービーを好むのは、こういう理由もある。
それが可能なのは二つの理由があるのではないかと思う。
一つには狭い空間に特定の人物が閉じこめられて移動しなければならないため、些細なトラブルを繰り返していた家族や友人が自分と相手の立ち位置を確認するため。逃げられない状態で自分勝手では自分が不快になるだけと分かっているなら、当然相手に気を遣うようになる。そうしている内に相手の抱えている問題を知るようになる。というパターン。ただし、これは消極的な面。
そしてもう一つが、前者も内包する事になるのだが、旅を人間的な成長として見ている事が挙げられるだろう。旅というのは人生の縮図であると共に、それを通して何かを掴むものである。と言う意識がある。目的地に向かうとは、即ち人生の目的を見出していく過程として認識しているという点。これは大変面白い点なので、いつか細かく研究してみたいテーマの一つ。旅を人生と捉えるのはまるで松尾芭蕉みたいだな。「月々は百代の過客にして…」これが日本ではなくアメリカの映画の特徴ってのが面白い所だけど。
さて、で、本作だけど、本作は典型的なロード・ムービーでありつつ、色々なずれもある。タイトル一つ取っても挑戦的。『Sideways』とはそもそも「脇道」のこと。先ほど挙げた条件を前提にしながら、一つの方向を見ているだけでなく、ちょっと脇道を歩いてみようか?と外してみせるタイトルの付け方は秀逸。それにこの作品の場合、旅そのものがだんだん痛くなっていくので、人間として成長していくとは思わせないのも特徴だろう(マイルスは本来ワインを楽しんでいたはずなのに、どんどん深酒になっていく。これはアルコール中毒の典型的パターン)。ところが、あれれれ?と思ってる間にちゃんと収まるべき所に収まる。この匙加減が絶妙。流石『アバウト・シュミット』(2002)作ったペイン監督。一見型破りなように見えて、しっかり落とし所を心得ている。物語に痛さを感じさせ、そしてそれが痛すぎないところでちゃんと救いを与える。演出の強味だろう。
更にジアマッティが良い役やってる。冴えない自分勝手な中年男を演らせたらこの人が現時点では最もはまるだろう。勿論彼一人だと痛いだけになってしまうためチャーチが存在してる。彼の存在は痛々しさの緩和剤としてだけでなく、自らが暴走する事によってバディ・ムービーっぽくしてしまう事が出来る事だった。いずれにせよこの二人のコンビは見事に息が合っていた。中年以上の方にはとても楽しめる作品であるとは言えるだろう。
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