[コメント] アビエイター(2004/米=日=独)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
実在の映画監督であり、実業家であるハワード=ヒューズの半生をスコセッシ監督がディカプリオを主役に据えて撮った渾身の大作。
で、私にとってこの映画はどうだったか。と言われてしまうと、どうだか?元々スコセッシ監督とはあんまり相性が良くないのもあるのだが、やっぱりちょっと合わなかったみたい。
確かに前半は良かった。若きヒューズが野望の実現に向けて突き進んでいく様子が実によく演出できていたし、その過程でのヘップバーンとの愛情の変化など、見所も多い。3時間という時間の内、前半1時間半は全然時間の経過が気にならなかった。
しかし後半になってからパワーダウン。苛々させられる展開が続く。
結局これが私がスコセッシ監督とは合わないところである部分だ(今、統計を取ってみたところ、私が観た監督作品は9つ。その平均点は5点満点の内僅かに3.1点)。監督作品の主人公は一種の超人であり、自分以外の存在を必要としてない。と言うか、結局どんな展開を持ち出しても主人公一人の中に帰ってきてしまう。結果、主人公の内面世界を延々と見せられることになるのだが、この見せ方が私は好きになれない。
ここでのディカプリオ演じるヒューズもそう。後半になって追いつめられれば追いつめられるほど、自分一人になってしまう。こういった堕落ものの場合、それまで築いてきた人間関係をボロボロに崩すとか、あるいはライヴァルキャラクタとの嫌らしさに崩れ落ちるような描写が必要なはずなのに、そこは徹底的に抑えられ、ほとんどが自分一人のナルシスティックな世界の中に入り込んでしまってる。それがどうやら苛つかせる原因だったのだろう(どうしても私が名作のはずのレイジング・ブル(1980)を好きになれないのはそのためだろうと、今気がついた)。定番であっても、堕落を演出するなら、人間関係の崩壊を描いて欲しかった気分。現実でもヒューズの個性が強すぎて周りの人間は引きずられるばかりで、彼と共にいてくれる人はいなかったんだろうけど、それでもそう言う人間がいるといないでは、全然没入できる度合いが違う…そう言えばギャング・オブ・ニューヨーク(2001)を結構楽しめたのはそこもあってのことか。
結局後半部分は私にとっては、全然感情移入できなかったため、退屈極まりないものとなってしまった。
尤も本作は褒めるべき部分は大変多い。キャラであれば、ディカプリオが青年から中年に至るまでをきちんと演じられたのが良かった。ディカプリオはベイビーフェイスだけに、役者生活も長くなかろうと思っていたのだが、これだったら充分これからもやっていけそうな感触を得た。特に額の縦じわの立て方で内面を表現できるようになったことで、役者として成長してることを感じさせてくれる。それに最近の女優の中では最も気に入ってる一人、ブランシェットは言うまでもない。この人の演技の幅には、新しい映画を観るたびに感心させられるばかり(この人の出演作の平均点は4点近い)。ここでもあのヘップバーンを演じるというので、さすがに無理じゃないのか?とか思っていたのに、すっかりはまりこんだ。後半に登場したアルダもなかなかの好演ぶりを見せてくれたけど、もうちょっとねちっこく登場してくれてれば。そこが勿体ない。
CG多用とは言え、『地獄の天使』の撮影風景も迫力充分だし、音楽も良し。
結局私が楽しめた全ては前半部分にかかっていたと言うことだ。
(評価:)
投票
| このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。