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[コメント] グリース(1978/米)

トラヴォルタの前作『サタデー・ナイト・フィーバー』から僅かに一年。これが大ヒットするような時代になりました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 それにしても僅か一年である。それでハリウッドの嗜好ががらっと変わったことを思わせられる作品だった。トラヴォルタの前作『サタデー・ナイト・フィーバー』は、ダンスシーンも良かったけど、何より青年特有の悩みというものに焦点が当てられていたはず。まだニューシネマの残滓が残っていた作品だった。故にこそ、ダンスシーンの華々しさと、その裏で悩む青年のギャップを楽しめる作品だったのだが、たった一年後に作られた本作は、悩むどころか、最初から最後まで脳天気そのもの。悩みと言っても、まるで古い日本の少年漫画みたいに友人との遊び、ライバルとの戦い、素直になれない恋人同士の関係に三分。それだけで突っ切ってしまった。なんじゃこの薄っぺらいにもほどがある物語は?

 私はたまたま『サタデー・ナイト・フィーバー』と本作を続けて観たので、それだけギャップに驚かされた。

 だけど、これはこれでありだろう。

 重い話題は避けられ、友情と恋愛至上主義に走り、そこにアクションを取り込んでしまえば映画は作れる…これって実は80年代の日本の風潮を見事に先取りした作品なのかもしれない。

 ま、勿論本作は物語を見るべき作品ではなく、歌い踊るトラヴォルタとニュートン・ジョンの姿と、本当に楽しそうなダンスシーンを見るべき作品なのだが、その開き直りはいっそ立派だ。それに事実ダンスナンバーは凄く心地良いものばかりだったし。

 とりあえず物語には目を瞑ろう。いや、物語を語り出したら文句以外出てくるわけ無いから。そう言った開き直りで観るべき作品だろう。事実、この風潮こそが1980年代の流れになっていくのだから。歴史的にもちゃんと意味はあった作品なのだ…多分。あと、強いて言えば年齢にも目をつぶった方が良かろう(当時のトラヴォルタは23歳、ニュートン・ジョンは29歳、ストッカード=チャニングは32歳という年齢だけに、高校生と言うにはちょっと無理があり)。

 本作はそもそもはトラヴォルタが19歳の時に出演したオフ・ブロードウェイミュージカル。元は舞台の主役ヘンリー=ウィンクラーに話が持ち込まれたが、もうティーン役はやりたくないと断られ、舞台では端役に過ぎなかったトラヴォルタにお鉢が回る。これが二作目の大ヒットとなったのだから、何が幸いするか分からないものだ。

 一方のニュートン・ジョンはこの前に『トゥモロー』が失敗に終わっていたので、その再起を賭けてのことで、見事に大ヒットを記録…その後、『ザナドゥ』(1980)というやっぱり失敗作を経て、再び再起を賭け、トラヴォルタと『セカンド・チャンス』(1983)を共演することになる…歌は良いんだよ。この人は。だけど、それを活かす作品になかなか巡り会えなかったのが不運だったと見るべきだろう。

(評価:★3)

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