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[コメント] 陽のあたる場所から(2003/仏=アイスランド=ベルギー)

荒々しくもあり、多少粗くもある小品。しかし、そのタッチが浮き彫りにする剥き出しの陰影が、時に作為のなさゆえの魅力を覗かせたりもする。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







心理的な説明を排したり物語性に重きを置かないというスタンスは、ネオレアリスモやヌーヴェルバーグがやってきたことを考えてみれば、決して新味のあるものではない。けど、あえてこの題材でそれをやる、ということには興味を覚えた。

二人の女性の心の疎通をテーマにしているようで、実は自然(をはじめとした神秘)と人間のあり方を描いているような気がした。あの町の人々の人格形成は、厳しい風土が少なからず影響している。自然の猛威を忘れないために残された小屋、それは幾度と繰り返した人間の奢りに対する戒めなのだろう。

そして、原題の「Stormy Weather」とは、嵐の記憶を内に宿してるロアのことを指してもいるのではないだろうか。森や陽光、自然に身を浸すことで平穏を取り戻すロア。ロアの内側の宇宙と自然界は、理解を越えて繋がっているかのようだ。そして、誰かが分かった気になって足を踏み入れる時、自然は容赦なくその者を打ちのめす。自分ではない何かを理解する、そこに奢りはないだろうか。映画は静かにその奢りを告発する。

ともあれ、興味深いとは思うけど、正直その偏った視点にやや違和感を覚えたりもする。理解が及ばないのかもしれないけど、それでも分かろうと試みるのが人間だと思うので。ただ、「理解しようとはもう思わない。ただ彼女が生きることを助けようと思う」みたいなニュアンスのセリフが印象深かった。というか、多くを考えさせられた。人というのは「生きる」ものなのか、「生かされている」ものなのか。みたいなことを。

(2006/8/30)

(評価:★3)

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