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[コメント] 愛についてのキンゼイ・レポート(2004/米=独)

終盤の、同性愛者の中年女性のエピソードが温かみがあってよかった。
わっこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







アメリカ人の男女の性に関する研究をし続けてきたアルフレッド・キンゼイ博士の生涯を描いた映画。

性について探求する作品というと『セックス調査団』もあるが、こちらのほうがストーリー性が強く、ドラマとして優れている。

キンゼイ博士のアメリカ人の性に関する研究を中心にして観ると、当時の保守的な時代の中で、異性愛者や同性愛者から様々な経験を聞きまわって、膨大なデータを聴取するところや、ゴシップに悩まされ、研究資金も底を付き、資金調達のため出資者を捜すところなどかなり細かく描かれているし、研究に人生を費やすキンゼイ博士をリーアム・ニーソンが真に迫る演技で演じていて、なかなか興味深かった。

キンゼイ博士を献身的に支える妻のクララを演じるローラ・リニーも演技はよかったが、終盤になって主人公をサポートするような場面がなくなってしまうあたりは、『ビューティフル・マインド』や『ポロック』と同じ感じで、もう少し出番が欲しい気もする。

キンゼイ博士の学者としての人生を描いたストーリーとしてはよく出来ているが、私生活部分ではあまりキンゼイ博士の人物像が描けていなかった印象。

例えば、自分の研究のことで喧嘩した長男とはその後どうなったのかとか、後半でキンゼイ博士が病院に運ばれた際に子供たちは全く見舞いに訪れないところなど子供たちとのエピソードがほとんど描かれていない。他にもキンゼイ博士の両親や兄弟との関係も希薄で、キンゼイ博士の人間関係があまり描かれなかったのが残念。

終盤、同性愛に目覚め、家族を捨てたが、キンゼイ博士の本のおかげで今まで後悔せずに生活を続けていけていることを博士に報告する中年女性のエピソードはなかなか温かみがある。保守的な時代の同性愛を扱った作品は悲劇的なものが多いだけに、この作品を見ていると、少なからず彼の本で精神的に励みになった人々も多いのかなとふと思ってしまった。この辺は『めぐりあう時間たち』も見習って欲しかった。

(評価:★3)

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