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[コメント] メゾン・ド・ヒミコ(2005/日)

人を「人として」見る視点。脚本の渡辺あやの丁寧さがよく分かります。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『ジョゼと虎と魚たち』(2003)の犬堂監督と脚本の渡辺あやのコンビ第2作。実は脚本そのものはこちらの方が早かったそうだ。これを書き上げた当時渡辺は島根に住む普通の主婦で、犬童監督がそのシナリオを読んで感心したことが二人の出会いとなった。そもそもはこの作品を自分で監督しようと、犬堂監督が申し出た所、自分で監督したいから売らない。と断固として断ったからだという。結果として犬堂監督は良質な脚本家と組むこととなり、『ジョゼと虎と魚たち』という傑作をものにしたのだから、大当たりだったと言えるだろう。

 本作の場合は結局映画化までに4年もかかってしまったが、流石に用意期間が長かっただけに、しっとりと観られる作品に仕上げられている。

 ゲイの男達を中心とするという設定は、流石女性脚本家らしいし、結構露骨な表現もあるのだが、それがいやらしいものじゃないように作っているのは上手さを感じる。主題が主題だけに合わないんじゃないか?と思っていたのに、意外にすっきり観ることが出来たのも上手い。

 ゲイという存在はマイノリティだが、マイノリティだからこその結束の強さを持ち、お互い嫉妬や陰口はあっても、それが致命的なものにはならない。その結果、男女の区別がない、“人間”としての魅力に溢れた存在になってる。

 その意味でゲイ役は微妙な役作りが必要とされて難しかっただろうが、全般的にうまくはまっていたんじゃなかろうか。特にオダギリジョーの上手さが映える。この人の役回りは、まとまっているゲイの老人達の対外的な窓口で、寡黙で慇懃ながら、時としてやくざまがいの恫喝までする。微妙な役作りを起用にこなしている。一方柴咲コウは、この人くらい“気の強いだけの普通の女性”を演じられる人はいない。と改めて感じさせられた。この人は芸能界でも貴重な人材だから長続きするよ。

 ちなみに同じ犬堂監督による本作と『タッチ』(2005)はほぼ同時期だが、まるで雰囲気が違っているのが面白い。

(評価:★3)

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