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[コメント] タッチ(2005/日)

あだち充特有の脳内検閲を取っ払った実写版は、思いの外凡庸な青春物語でした。確かにあまり面白くない、けれど原作よりかは好感が持てる。正直評価に困ります。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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場も弁えずに原作に対してどうこういうのも何なんですが、そもそも少年誌の漫画なのにキスシーンで唇を描けない(またはあえて描かない)といった類の嘘臭さが、作品全体で横溢しているこの漫画は正直苦手です。表面上至って淡白な皮を被っているだけに、時折薄気味悪さすら覚えます。何かと言えばエロ本見倒してると言っても、エロ本見て何を妄想しているのかが何も伝わってこないっつぅのは、逆に薄気味悪いですよ。でも、とか言いながらも、確かに中学生位までは何も考えずに読んでました。キスなんてどんなもんだか分からなかった頃までは。

その漫画のノリをそのまま実写でやるということ自体無理な話なので(というか、実写であのノリをやられたら薄気味悪くないですかね)、印象がガラリと変わるのも自然なことで。斉藤兄弟の顔は明らかに男子高校生の肌だし、顔どころか声もほとんど同じなのでどっちがどっちだか分からなくなるし、長澤まさみのしゃべりもしっかりイマドキだし。でも、だからこそ、その等身大振りに安心したりもするのです。確かに、音楽は煩いし、独白は鬱陶しいし、映画としては標準以下かもしれませんが、キスをしたあと部屋を出ての長澤まさみの動揺とか、達也のボールを無様に顔(マスクありですが)で受ける姿とか。泣くときも人知れず泣いて弱みを見せない漫画の浅倉南なんかよりも、達也の前でワンワン泣いてる長澤まさみの方がいとおしく思えたりするワケです。そういった意味ではアイドル映画として成功かと。ついでに言うと、斉藤兄弟の箸にも棒にもかからない演技のおかげで、自然と長澤まさみに視線がいく、という効果もあるかと(計算なんだろうか)。

原作ファンなら外せないエピソードを拾いつつ、という商業映画として真っ当な姿勢を保ちつつ、和也が死んだ後あたりから原作色が薄まり、原作ファンは戸惑ったんじゃないでしょうかね。達也が全然達也っぽくないのは斉藤祥太の力量不足なのだろうか。ともあれ、狙いはともかく、あまり出来の良い脚本ではないですね・・・。それでも、性の生々しい面を無視し、拙さや無様さを無きものとする、あだち充特有の検閲(省略ではなく、あくまで検閲)からある程度開放された三人の主人公を見て、どこか安心感を覚えました。

特に長澤まさみファンというワケではないですが、彼女は突出した個性を持っているというよりは、最大公約数的な魅力なんだろうな、とあらためて思いました。そういった意味では適役だと思います。浅倉南は「あんなこと言って欲しい」「こんなことして欲しい」男子の妄想の産物なので(それを大の大人が本気で創り出すなよ、とは思いますが)。

[2.5点]

(2007/07/22)

(評価:★2)

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