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[コメント] 疾走(2005/日)

シュウジの犬の遠吠えや、走りながらの咆哮、黙々と走る、それらの行動がやり場のない感情の矛先となって破滅へと疾走していくようで、胸が熱くなりました。
づん

この現代の少年少女の空虚な感じ、こういったものが私には全く理解出来ないし、シュウジ(手越祐也)が何を思いそういった行動を起こしているのかが私には全く理解出来ませんでした。彼の起こす一つ一つの行動が全て「?」で、それはきっとシュウジ自身も「?」なままなんだろうと思います。それはふいに浮かんだ感情を後先を考えずに行動に移すシュウジの性格が災いしているのではと思いますが。

ただ、コピーにある「誰か一緒に生きて下さい」はとても良いと思いました。言葉だけだと陳腐に響きますが、この一言にシュウジの全てが込められているんだなと思うと、シャッターに走り書きしたこの言葉がズンと重く感じられました。生きる事も死ぬ事も、そして誰かを殺す事も、何もかもが彼らにとって不透明であり、そしてそれは決して彼らのせいではないというところが観ていてとても痛々しい。生死が濁っている中で、一人が嫌だからとか、不安だからとか寂しいからだとか、そういった理由でなく、人の体温を近くで感じ取る事の安心感、生きる事のリアリティを求めていたのかなと思います。

手越祐也にしろ韓英恵にしろ、棒読みな台詞が最初はとても耳障りだったのですが、その抑揚のなさが彼らの生き方とリンクするように思えて、途中からは全く気にならなくなりました。シュウジの、犬の遠吠えや走りながらの咆哮、ひたすら走る、それらの行動がやり場のない感情の矛先となって破滅へと疾走していくようで、胸が熱くなりました。一緒に生きてくれるであろう人が周囲にいたにも関わらず、その疾走が止められなかったところが切ない。手越祐也の演技は決して巧いというものではなかったですが、目の表情がとても良いと思いました。ドラマよりもむしろ映画的な雰囲気を持った子なので、化ける可能性は充分あると思います。

ちょっと尺が長い気がしたのですが、実際はそうでもなく125分。長く感じてしまったのは、原作をなぞるような脚本のせいだったのかなと思います(原作は読んでいないのであくまで推測ですけど)。

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06.02.02 記

(評価:★3)

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