[コメント] 美しき野獣(2005/韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
クォン・サンウとユ・ジテ、「野獣派」と「知性派」にするというなかなかいい骨格を使っておきながら、ここまでしかできなかったのかという残念さが残ってしまう。
ストーリーが粗すぎる。脚本のせいなのか、最終的な編集の結果なのかは分からないけれども。全体的に、主要人物の背景描写が説明的過ぎるのはちとつらい。ユ・ジテがクォン・サンウをチームに迎える下りが唐突で飲み込めない。「なんじゃこりゃー」。チームを組んでからはこの二人の「性格」の対比が弱いので、キャラとしてお互いを立て合っていると言えない。クォン・サンウとユ・ジテがはめられて以後、映画のイメージが突然変わって、監督の主張が全面に出てくる。「なんじゃこりゃー」。が、ここのどんでん返しがまた粗いので(突然録画が止められるところや、部屋を平気で荒らしていくところなど)、ちとつらい。クライマックスは結局二人とも「野獣」で終わってしまって、なぜなのか伝わらず感情移入しきれない。不完全燃焼。
クォン・サンウには、チンピラとしての貫禄は不十分だったかもしれない。スタントを徹底的に避けたアクションも手伝ったと思うが、喧嘩っ早い割に、さほどに強くなくて、いちいち苦戦するあたりが等身大さを醸し出して、これはこれで監督のねらいなのかとも思った。ただ、この風貌、1970年代ならともかく、今はイマイチなんじゃないか、松田優作系でもないんだし、と思いながら見ていたら、終盤、刺されるじゃないかぁ、なんじゃこりゃあ。刺され方のあっけなさはある意味優作かもね(それまでのキャラは別にオマージュでも何でもないのだけれども)、と苦笑してしまった。
映像も、頻出するクォン・サンウも効果を出し切れていない。ズームとカメラの前後移動を併用した『めまい』系のカメラワークがあったような気がしたが、あれは空回りでしょう。実験精神は買うけれど、うーん。
川井憲次の音楽も、それぞれの曲は決して悪くないんだけど、映画のテンポのせいで、若干音楽もマンネリ的退屈さを招いていたような気もする。うーん。別曲で収録して歌手の口アップまであったバーのシーンにオリジナル曲を重ねた技術は感動(パンフで言及を知ってびっくり)。
ここまで言っておいて、でも2点以下にはしない、ユ・ジテはかっこよかったよ。でも、2点にしなかった決め手はライターの火と狙撃銃のレーザー・ポインター。絵として見ていられたから。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。