[コメント] 落第はしたけれど(1930/日)
これはむしろ現代で語るべき題材ですね。全く古びてません。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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小津監督のサイレント時代の作品には斎藤達雄がよく登場する。それだけ小津が好んだ役者なのだが、何となくその理由は分かる。長身で彫りが深い斎藤は他の役者と較べはるかにバタ臭く、和製ハリウッド作品を目指す当時の小津監督にはぴったりだったんだろう。斎藤もそれに応え、全ての作品で様々な役を見事に演じているが、本作ではそのバタ臭い顔が情けなく歪んでいくあたり、なかなか見応えあり。
しかしこの時代に作られた作品として考えると、むしろ現代にコミットしている気がしてならない。長期の不況の中、大学を出ても就職先はなく、それよりはむしろ大学に居残る方を選んだ方が良いとか、就職先もなく、みんなで下宿先で大学に居残った人間を羨ましそうに見てるとかの皮肉な描写に溢れ、一方ではその中での恋心とか、やるせない思いもよく出ていた。実際これって今の日本では当たり前の光景となっている事を感じさせられてしまう。
留年というのは流石に本人にはこたえる。しかし、価値の転換もあり得るのだ。という小津監督の視点が感じられて良し…勿論それが当たり前になってしまっては困るのは事実なんだけど。
そう言えばこの時代には内定という制度はなかったのかな?ここに登場する学生はみんな卒業してから就職活動してたみたいだけど。
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