[コメント] コールガール(1971/米)
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これまで映画では基本的に中心に取り上げられることがなかったコールガールを主人公とした作品で、レーティングシステムの導入でようやくハリウッドも自由に映画作りが出来るようになったことを感じさせる作品。
特に既に世界的スターとなっているフォンダの体を張った演技にも評判が集まった(体を張ったというのならば、『バーバレラ』(1967)もそうだけど)。彼女の本作の役作りに対する意気込みは凄かったらしく、実際1ヶ月の間ニューヨークでコールガール達と生活を共にしたという(彼女はインタビューで、誰も彼女のことが分からず、一人も交渉してくる人がいなかったとか言ってたようだが)。社会運動家としても有名なフォンダのこと。これは現実に虐げられている女性の地位を向上させようと言うリブ運動の一環として位置づけていたのだろう。お陰で彼女の演技は(色々な意味で)切れまくる。怯えつつ、大切な部分を上手くぼかした発言を繰り返すところとか、とぼけていてもどこか冴えた発言がある女性役を見事に演じていたが、凄いのは生々しいベッドシーンや仕草の方。確かに気が強すぎて「色っぽい」という基準からはどこか一線を画しているものの、見事な演技力を披露してくれていた。
物語の形式は、一見するとオーソドックスなもののように思えるが、それは現代の目から見たからであり、実際これ以前にここまで生々しい捜査の描写が無かったと言うことを考えると、本作がサスペンスの一つの形式を作り出した。と言っても良いのではないだろうか?ただ、現代のスタイリッシュさはまだ無く、生々しさが少々鼻につく部分は確かにあり(謎解きも謎解きになってないし)。洗練される前の荒々しさを観るのも又一興だろう。
本作の主役がフォンダであることは疑いようもないが、当時のNYの街並みと、そこでの時代的な不安というのも同時に描かれており、実際に本作の主役はその舞台とも言えるだろう。
フォンダは当時政治運動に多額の資金を援助しており、更に社会運動を嫌う製作会社に好かれていなかったためにこのままでは破産という状態だったが、本作でオスカーを得ることによって返り咲くことが出来、更に本作でドナルド=サザーランドと意気投合し、反戦グループを結成。ヴェトナムに行って反戦活動を活発化させることになる(サザーランドは前年『M★A★S★H』(1970)でキれた演技を見せていたのもあったんだろう)。
なお、ここで彼女がオスカーを受賞して政治発言を延々とやったらどうするかで相当もめたらしいが、オスカー受賞の際は全く政治色を出さず。これは父ヘンリーの助言によるものと言われる。
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