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[コメント] 彼岸花(1958/日)

小津監督のパターンを踏襲していながら、ちゃんと喜劇になってます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 小津作品は本当にこういった、どこにもありそうな素材を使った作品が多い。父と子の世代の違いによる心の食い違い、仲間との馬鹿話、夫婦の会話など。正直、物語だけで考えるならば、こんなのでよく映画になるな。と言うイメージがあるのだが、不思議なことにこんな何気ないストーリーが監督の手にかかると大変魅力的、且つ面白く思えてしまう。まことに不思議な監督だ。役者同士の呼吸の巧さと、徹底してこだわったカメラアングルの見事な融合のお陰かも知れない。

 彼らは感情が激した時もきちんと演技をしている。その抑えた演技が、その人物の内面を感じさせることも重要だろう。

 畳みかけるように監督の思想がやってくるのではなく、むしろ観ているこちら側が考えなければならない。これが小津作品の特徴であり、そして彼の作品が受け入れられている理由ともなっているのではないかと思える。それは勿論他の監督の作品でもあるんだが、ここまで特化した映画が作れる監督はこの人くらいだろう。

 娘役の有馬稲子にとっても、本作が出世作となる。

 カラーでも、やはり小津監督独特のカメラアングルは健在で、殆どがあおりのバストショット。人物も語っている間は先ず動くことがない。

 それで感情を表現できるのだから、やっぱりただ者じゃないな。

 1958年邦画興行成績は10位で、監督作品にしてはかなりヒットした作品とも言える。

(評価:★4)

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