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[コメント] ニコラス・ケイジのウェザーマン(2005/米)

風が強いと言うだけで笑える作品は滅多にありません。ただしケイジが主役だからこそなんですが。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 『パイレーツ・オブ・カリビアン』のヴァービンスキー監督が、1作目と2作目の間の充電期間に作った作品で、これまでの監督のフィルモグラフィからは考えられないほどにウェットで静かな作品に仕上がっている。

 ちょっと成功したから挑戦したんだろうけど、正直ちょっと驚いた。こんな作品も撮れるんだね。ケイジの存在感もとても良い。

 なんというか、私の好みの直球ズドン。という感じ。ハリウッドではよくあるタイプの作品で、ばらばらになってしまった家族の絆を取り戻すといった感じで、本作の場合特に移動しないロードムービー的な演出がなされている。ばらばらになった三世代にわたる確執が徐々にほぐれていく。実はこういう作品が私は大好き。

 本作はしかも物語を敢えてわかりやすいハッピーエンドにはせずに、主人公のデイブは徐々に苦しみが増していかせて、そのまま終わらせてしまう。尤も、苦しみと言ってもたいしたものじゃなく、未練たっぷりに追いすがる元妻にもっと冴えない中年男の影が見えたりするとか、何事か悩んでいるらしい娘があからさまに無視するとか、常に皮肉で辛らつな言葉を投げかけてくる父とか、いつもファーストフードを車越しに投げつけてくる男とか…極めて現実に即したリアルな、ちょっとだけ気分がささくれ立つような苦しみの連続。

 そんな苦しみに遭う度に悪態をついては、又人生に戻っていく。苦しみが劇的でないのだから、その解決策も劇的ではない。様々な試みがなされ、失敗する度に肩をすくめ、又新しい打開策を考えていく…この辺も極めてリアルだ。

 そんなしょぼくれた役をケイジが好演。この人は器用で様々な役が出来るが、この手の役が一番のはまり役だろう。何よりそう言った細かい苦痛を、仕事とか他のものに振り分けて気晴らしするのではなく、苦しくとも、真っ正面にそれを受け止めて生きていこうとする姿勢が素晴らしい。ある意味彼はこの作品でもヒーローを演じているのだ。

 その人生のペーソスのようなものが、ちょっと世間とずれた時に笑いが出る。微妙なところなんだが、そのずれを楽しむ作品とは言えるか。私自身も、ほろりとするのではないのだが、ラストシーンを観た時には泣き笑いのような表情になってしまった。

 舞台のシカゴというのも良い感じ。どことなく乾いた風の強い街。というシカゴのイメージをうまく活かしている(…その風の強さが一種のジョークになってるシーンもあるけどね。強い風にふわりとたなびくあの頭はそのまんまジョークだ)。

(評価:★4)

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