コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] シェルブールの雨傘(1964/仏)

画面の華々しさに目を奪われている内に、決まり悪さを感じるまでもなく、素直に受け止める事が出来ました。恋愛作品でこんな素直に観られたのは久々です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 エスプリの効いた恋愛劇のミュージカル映画。よくは知らないのだが、実はフランスのミュージカルというのは数少なく、そのなかでドゥミ監督は敢えてそれに挑戦しつつづけているのだそうだ(最近でも『8人の女たち』(2002)なんてミュージカルの佳作が出ているのに、フランスでミュージカルが受けない理由はよく分からない)。

 本作の場合、敢えて受けないはずのミュージカルに挑戦しているのだが、新しい試みもふんだんになされている。

 あらゆる局面で音楽が用いられ、なんと台詞までが歌になっているというのは画期的。黙っているか歌を歌っているかだから、オペラに近い作品と言えるのかも知れない。それにもう一つ。これは面白い効果も生んでいる。通常ミュージカルのダンスシーンは感情の盛り上がりを表すために行うが、本作の場合は通常の場面でも用いられているため、静かで落ち込むような曲調も多い。ミュージカル映画で静かな音楽が多く使われる事も珍しい。

 それがどうやら私には上手く働いたようだ。私が恋愛ものが苦手な理由の一つは、男女関係見ている内に決まり悪くなってしまうためだと思うのだが、本作の場合は苦手なドロドロした人間関係が描かれているにもかかわらず、話はすっきりまとまり、華やかさともの哀しさが上手くミックス。

 ところで主演のドヌーブは前年にヴァディムとの間に未婚の子を産んだばかりで本作に主演。それを考えると、まるでその心境を演じているかのように思える。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。