[コメント] キンキーブーツ(2005/米=英)
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イギリス発のコメディ作品。優柔不断で貧乏な主人公が、起死回生の一手としてとんでもないことをやらかすという、系列としては『フル・モンティ』(1997)に近い話。ただし本作の場合は実話が元(舞台となっているブルックス社は実際に存在し、撮影にも用いられているとのこと)。
イギリス流のこういったシニカルなコメディは大好き。本作の場合は特に設定部分がなかなか凝っていて、主人公のチャーリーは崖っぷちに立たされているのではなく、ちょっと視点を変えれば逃げ出す事も出来た。と言う点が特徴的。実際チャーリーの婚約者ローレンは常にその道を用意し続けている。これがもしアメリカで作られていたら、チャーリーは完全にヒーロー的な描かれ方をされて然り。しかし、あくまで彼を駄目男として描く所がイギリス流だね。あくまでそこにこだわった所は良いぞ。
勿論ドラッグ・クィーンの存在が上手くメリハリになってる。ローラは傍若無人に振る舞い、自分の生き方を誇っているように見えながら、実はとてもナイーブ。とても傷つきやすい存在というのも良いね。あれだけ目立った動きしながら、実は周囲の人間にとても気を使っている一面も見えて、実に良い役やってる。こういうマイノリティの人間は、周囲の圧力に対して自分を強く見せるしか自衛の方法がない。だけどそれには当然無理が生じるため、自分自身をすり減らして生きていくしかないのだ。そのギリギリの生き方をよく表していた。
ただ惜しむらくは、設定の良さを物語に昇華させきれなかった所。前半で期待させておいて、中盤の中だるみと、最後のハレの部分が演出不足だった。全般的に物語の動きがもっさりしすぎたのは演出不足のためかと思われるし、ローラ以外のドラッグ・クィーンが何を考えているのかという部分を出す事が出来なかった。それがクリア出来れば佳作と成り得たのだけどね。
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