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[コメント] アリスの恋(1974/米)

男臭い作品を撮らせたら随一のスコセッシ監督ですが、そのデビュー作が女性を主人公にしてるってのが、なかなか皮肉な話です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 スコセッシ監督をイメージすると、やはり「男のドラマ」に尽きるのではないだろうか?この監督の作る映画はどれも意志力の強い主人公とそれを取り巻くやっぱり強い男達が登場し、画面狭しと暴れ回るイメージがどうしてもつきまとう。それは戦いであったり、人助けであったり、友情であったり、頭脳戦であったりするのだが、どんなものを描いても、やっぱり「スコセッシだ」と思わせるものばかり。

 ところがメジャーデビュー作である本作が女性を主人公にしているというのは大変興味深い。勿論彼女を取り巻く男達(しかも駄目人間ばっかり)との関わり合いが本作の主軸とはいえ、監督にしてはかなり異色な作品に仕上がっている。実際本作はスコセッシらしさとらしくなさが混在した話で、かなり自分を抑えて描いているんじゃないか?と言う印象もある。でも、それは決して悪くない。割と低予算で作られた分、キャラの魅力を深く掘り下げ、駄目人間は駄目人間なりに魅力的に描き、その間であたふた苦労するローズ役のバースティンを面白く、魅力的に描く事に成功している(決してコメディではないけど)。

 だから結局本作はバースティンを取り巻く男達の物語なんだよな。

 そう割り切って考えると、やっぱりスコセッシは例えアウェイであっても自分のフィールドに物語を引き込んで作れる監督だったと思える。この資質あってこそ、アカデミー常連たる実力だよ(監督賞としての受賞は意外にもディパーテッド(2006)が初なのだが)。

 ちなみに監督にスコセッシを選んだのはバースティン自身。彼女の目は確かだったようだ。この際ワーナー首脳部に呼ばれたスコセッシは緊張しっぱなしだったという。この際、バースティンが「女性について知ってますか?」と訊ねたところ「全然。でも勉強します」と答えたとか…らしすぎるよね。

(評価:★3)

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