[コメント] 明日に処刑を…(1972/米)
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本作は早撮りと低予算で知られるロジャー=コーマン製映画の一本。コーマン製低予算映画はフィルムをあまり使わず作らず、徹底してサイクルを早くすることで、ギリギリの儲けを得るというモデルケースのような作り方が特徴で、現代のハリウッドとは隔絶の感があるが、同時に彼の映画によって新人監督や新人役者でメジャー化した人も数多い。ある種映画界にあって重要な位置づけをもつ人物である。
その中で台頭した一人がこのスコセッシ。後に大監督の一人に数えられる彼のデビュー当時の苦労がここで垣間見られるだろう。本作はコーマンに抜擢されて僅か24日で撮影されたのだそうだ。
だが、低予算であるのは決して弱みではない。本作は後のスコセッシ映画に通じる骨太で残酷な物語の開始となったのみならず、本当に「これを撮りたい!」という思いが詰まっているかのよう。作りとして低予算であるのはよく分かるのだが、それ以上にフィルムを通して映画好きの情熱が叩きつけられているようである。ストーリー展開としては『俺たちに明日はない』(1967)っぽいが、あそこではできなかった生々しさと暴力描写が映える。特にラストシーンの生々しさは『俺たちに明日はない』での死のダンスの描写の遙か上を行ってる。よくやったもんだ。
本作に登場するキャラクタは当時無名の人達ばかり。演技は垢抜けないが、だからこそスタントマンまがいの危ない役を生でやらせることができたし、ラストシーンの肉体的精神的な痛みは本物に見える。それにスコセッシ自身は意識してなかったようだが、本作が契機でバーバラ=ハーシーがブレイク。健康的な色っぽさがその肢体を通じて画面からあふれている。結果的に彼女の存在こそが本作を特徴付けている。
本作が低予算であることがよく分かるのが、キャラの格好かもしれない。金がかけられない分、時代考証に力を入れることができず、登場するキャラがみんなヒッピー然してる。あるいは格好を現代(当時)にすることで、現在との対比という形に持っていこうとしたのだろうか?ま、考え過ぎだろうけど。
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