コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] オール・ザ・キングスメン(2006/独=米)

やっぱり名作をリメイクするのは難しいと思わされる。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『オール・ザ・キングスメン』(1949)に続いてロバート・ペン・ウォーレン原作の2回目の映画化作。

 ここでは1作目と比較して本作を考えてみよう。

 1作目のウィリー役ブロデリック・クロフォードは非常に幅のある演技をしてくれた。物語冒頭では単なる気の良い親父のように見せておいて、それから正義の人に変わり、最後は堕落していく。つまり、三つの役割を演じ分けねばならなかったのだが、そう言った役を非常に巧く演じて見せた。最初は純粋な善意であり、人のために働くことを何よりも喜んでいた人間が、権力という麻薬の虜となる過程を克明に描き、それに見事に応えた。と言うべきかも知れない。

 対して本作でペンが演じたウィリーはどうだろうか?

 彼はカリスマ性が最初から高く、人を意のままに操ること、自分の良いイメージを植え付けることに長けたキャラとして描かれている。自分のどこが人より優れていて、足りないものは何なのかをよく知っていたため、そう言った足りないものを補ってくれる人のために身を惜しまずに働き、知己を得てからはその人を使っていく。最初から政治家になるべくしてなったと言う人物に見える。

 ただ、ここでの問題は、カリスマにありがちな自分をさらけ出す事をしないし、どんなに気持ちが高ぶっていても、必ず冷静さを持っていると言う点。だから権力に上り詰めるのも偶然ではなく、最初から狙ってのことのようにも見えるし、人に見せる思い遣りも全部最初から計算ずくでやっていたかのように見えてしまう。

 これによって一作目の場合、分かりやすい性格の変化が本作ではとにかく分かりづらくなってしまった。一作目が単純すぎたからそれを踏まえてのことなのかもしれないけど、結局最初から最後まで主人公が得体の知れない人間のまま終わってしまった感じ。  演出面にしても、よく言えば重厚だが、悪く言えば暗い雰囲気作りをしているため、メリハリが付けにくく、カタルシスが感じられない分、観ていて疲れる。

 そう言う意味ではリメイクとしては失敗じゃないだろうか?

 重厚で作りそのものは悪くない分、主人公の造形に失敗したのが痛い。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。