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[コメント] ベオウルフ 呪われし勇者(2007/米)

少なくともこんな物語を今のハリウッドで作れる監督はそうはいないと思いますよ。そこがゼメキスらしくないような、逆にゼメキスだから出来るような…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 なんとも微妙な作品。北欧の寒さと生身を誇示して剥き身(下品?)で戦う物語なのに、寒さも肉体性も感じさせないというのは作り自体に問題があるんじゃないのか?大体戦いのシーンなんてCG丸わかりの上に動きがカクカクしていて、全然リアリティもない。既にハリウッド作品ではクリアしたはずの描写がなんで?あるいはクレイアニメーション世代のゼメキス監督の狙いだったのかも知れないのだけど、少なくとも上手くは機能してない。これだったら最近のゲームの方が動きがリアルなくらい。これ観てたら、一時期「映画のようなゲーム」という言葉がもてはやされていたけど、今やゲームの方が上を行ってるんじゃないか?と思えてきてしまった。動きはどれほどぎこちなくとも、生の迫力で見せて欲しかったものだ。はっきり言って演出はさほどとは思えず。はっきり言ってどうしようもなく悪い。

 一方、キャラに関しては文句付けられず。主人公のウィンストンなんてこれまで全く意識した事はなかったのだが、これだけワイルドさ溢れるキャラがまだいたんだ。と思えて嬉しいし、それ以上に脇を固めるヴェテラン勢が良い演技を見せてくれてる。特にホプキンスはこんな下品なキャラまでもしっかりと演じられる。この人歳食ってからますます芸幅広がったね。嫌味なキャラとしてのマルコヴィッチもはまり役。この人こういった役上手いんだけど、こんな脇役に登場なんてとても豪華だ。個人的なファンのグリーソンも良い役やってる。この人が格好良いと、なんか嬉しい。ジョリーは言うまでもないか。ひょっとして一番体当たりの演技していたのはこの人だったかも知れないしね。

 あと、実は結構評価出来るのは、これも引き合いに出して悪いのだが、少なくとも私には『300 スリーハンドレッド』のようにアメリカナイズされた物語には思えなかった点。ベオウルフもフロースガールも強さも弱さも全部さらけ出し、果断な性格とウジウジした性格を共存させていて、決して見た目通りのヒーローや悪役にはならなかった。「正義のために戦う」なんてひと言も言わず、ただ自分の欲望に忠実なだけ。変な建前が無いので、むしろそれがとても好感持てる。物語が退屈という評も見かけるけど、決してそんな事は無いと思う。主人公達が次に何やるのかが分からないというのは結構好きだぞ。

 本作は演出で観るのではなく、北欧神話っぽさをしっかり受け継いだ作品として観るべき作品だろう。

(評価:★3)

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