[コメント] 白鯨(1956/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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高校の時の2時間続けての音楽の時間。これは時折「感受性を豊かにする」と称して音楽の先生がビデオで映画を流してくれた。そこで何本かの名作と出会うことが出来たが、本作もその一本(ただ2時間では観られない長さなので時折端折りながらだったが)、その後、原作にも挑戦したのだが、惹かれる部分の多い小説で、今でも時折何故か読みたくなる。
それから約20年の歳月が流れ、再び見えることになった本作。あの時に覚えた感動を、再び得ることが出来るだろうか?
内心少々緊張を覚えつつも拝見。
冒頭の瞬間に「あれ?」と声が漏れた。こんな月並みな始まり方だったのか?まさか冒頭に主人公の説明を長々入れるなんて映画だと褒められない方法を使ってる。大家のヒューストンらしくない演出じゃないか。脚本にブラッドベリが関わってるから、そっちの方に引っ張られたか?何にせよ冒頭から思いっきり失敗してるじゃないかよ。しかもご丁寧にエイハブ船長の語源まで口で説明してくれるサービスぶりだが、そのサービスは無意味。
ストーリーそのものはそつなくまとまっているし(ダイジェスト版だけど)、壮大なセットと時折出てくる特撮はややチープさを感じさせて微笑ましい(笑)。捕鯨の勇壮なシーンや鯨油を搾り取る課程もちゃんと出ているのでそれは良し。
結局の話、本作の最大の問題点はキャラクターだろう。原作では奇矯な行動をとり続けながらも憎めないキャラクターとして描かれていたクイグエグの個性が感じられず、主人公イシュメイルが全く良いところ無しと言うこともあるが、一番の問題はエイハブ役のグレゴリー=ペック。好青年ぶりでならした彼が新境地に挑んだことは評価していいけど、やっぱりエイハブ船長の狂気ぶりを演出し切れてなかった。まだまだあれでは足りない。もうちょっと強烈な個性が欲しかったよ。ペック自身は良い役者だと思うのだが、稀代の名優オーソン=ウェルズを出しておいて、それを使えなかったのが一番の問題。この人こそエイハブ役にはぴったりだったと思うのだが(ウェルズ自身の登場シーンも殆どカメオ出演と代わらない程度。何と勿体ない)。
総じては決して悪い作品じゃない。ただ、乗り切れないだけだ。高校の時の味わった感動はどこに行ったのか…少々悲しい気持ちになった。
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