[コメント] 崖の上のポニョ(2008/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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私が好きだったのは冒頭。小さい頃って何か大切なものが手に入ると、ついついそれを手放したくなくて、身近に置いておかないと不安でしょうがなくて、どこに行くにも持ち歩いて、その事で頭がいっぱいになってて。そのくせ何故かそういうものに限ってすぐ失くしちゃう。海で見つけた金魚(ってのもまたおかしな話だけど)に名前をつけて大事にしようとしていたその日のうちに、手元から離れちゃうなんて、なんだか自分も思い当たる節があって、とてもメランコリックな気分になってしまいました。そこに何のメッセージが込められていたのかは分からなかったし、もしかしたらメッセージなんてそこにはなかったのかも知れないけど。
それから魔法を使うポニョと、体一つで頑張るそーすけが対称的に描かれていたのも面白かった。直感的な女ってものと、そんなものはないけど体を張って出来る事をする男。眠ってしまったポニョを気遣い、自力でボートを押すそーすけとか、トンネルを怖がるポニョの手を取り、半歩前を歩くそーすけとか、5歳の子供だけど、二人の間にはすでに男女の関係が出来上がっている気がしました。変な意味ではなくてね。
そしてラストはなんだか胸が痛かった。女ってさ。なんで何かを得る時には何かを失わないといけないんだろうか。大切なものを並べてどちらかを選べみたいな究極の選択を迫られる事が女って多い気がする。ポニョは両親に対して全く後ろ髪を引かれる事もなく、迷わずそーすけの元に飛び込んだけど、それでいいのかと。アンタに突きつけられた究極の選択に対し、そんな簡単に答えを出していいのかと。すでに年を取りすぎた私なんかは思ってしまう訳です。なんとなくハッピーエンドで終わりましたけど、彼らの人生が本当にハッピーエンドを迎えられるのか、老婆心からついつい心配になってしまった私です。でも同時に、人生ってそんなに思いつめなくても案外簡単に幸せなんて掴めるー♪とポニョに言われたような気にもなりました。臆病になって色んな事にイマイチ踏み込めない私にとって、ポニョの直球ストレートがドーンとストライクした感じのラストでした。
しかしこの監督、ハウルぐらいから色使いがちょっとキチガイじみてる感じがする。ハウルの部屋とか深海の色鮮やかさとかちょっと色彩感覚が奇抜すぎる。年をとると派手好きになるとかそういうのとはまた別の、なにか病的な色彩感覚がとても気になる。
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08.08.20 記
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