そりゃそうだ。子供はパコの方に感情移入し、大人達はパコを囲む周りの大人達に感情移入するからだ。パコ自身は、両親が交通事故死したという事実に気づかないまま、母親に渡された本を読む誕生日を繰り返すだけに過ぎない。だから本人にとってはちっともつらい日々ではない。

　それに比べ、周囲の大人達は苦悩に満ちている。娘の結婚式に呼んでもらえないオカマや、大人になって悲哀を味わう名子役、自分が社会に必要とされていないと気付く老人…。少しは社会経験を積んでいる大人だからこそ感じるつらさが描かれている。

　ちょっと意地悪な見方かも知れないが、僕にしてみれば大人達は勝手に「パコは可哀相」だと決め付け、自分達の自己満足のために劇をしているようにも見える。泣き所でも、子供よりもむしろ大人のすすり泣く声の方が聞こえてきたように感じる。