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[コメント] 13日の金曜日(2009/米)

 食傷気味のホラーリメイクの中ではかなり上手くまとめられた作品とは言えると思います。あくまで比較ですけど。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『トランスフォーマー リベンジ』(2009)の大ヒットも記憶に新しいベイ監督はもう一つ製作者としての側面もあり、2000年代になってから精力的に過去のホラー作品のリメイクを行っている。ホラーリメイクはいくつかの点において諸刃の剣で、結構危険はあるものの、概ねにおいて好評をもって迎えられてはいる。

 ホラーリメイクの良い部分は、演出面。過去作られた、いわゆる「名作」と呼ばれるホラー作品は、低予算と言うこともあって描写力に劣る。私が言うのもなんだが、怖い演出と言うよりも、特撮に頼る撮影は一種の失笑をもって受け取られ、コミカルなネタにされやすい。それをそれなりの予算で現代の洗練された演出力をもってすれば、かなり見応えのある恐怖シーンを演出できると言う点だろう。

 一方、ホラーの肝はそう言った演出に頼る部分ではなく、アイディアと意表を突く物語展開にあるとするのなら、洗練された演出は全く逆に受け取られてしまう。どんなすばらしいアイディアも、それを繰り返すだけでは新鮮味が無く、かえって思い出が汚されてしまうなどという事も起こり得るわけだ。

 実際その両面を示したのが『悪魔のいけにえ』(1979)のリメイクである『テキサス・チェインソー』および『テキサス・チェインソー・ビギニング』で、恐怖演出にはオリジナルに勝るものの、分かってる物語を単になぞるだけというていたらくで、全然面白いとは思えずに終わった。

 そんなこともあって本作も実は全然期待もしなかったのだが、本作の場合はその反省点もふまえたか、結構楽しく観ることができた。

 オリジナルである『13日の金曜日』は、前提として最初に誰が犯人であるか分からず、殺人者の登場も話がだいぶ進んでから。その部分が楽しかったのだが(もちろん一作目に限るのだが)、ここでは既に犯人は”不死の怪物”ジェイソンであることが分かっている所から話が始まる。そもそも一作目に関しては犯人自身がジェイソンでなかったのだから、これはどっちかというと『13日の金曜日PART2』のリメイクに近い。

 その部分かなり割り切って作られており、本作はオリジナルの1作目と2作目を合わせたような物語に仕上げられているのが特徴といえよう。2作を合わせた事によって、物語展開がそのどちらに流れていくのかを観ている側は楽しむ事ができ、少なくとも物語展開に飽きは来ない。13日の金曜日だからこそ出来たリメイクの仕方と言った所だろうか。  ストーリーがきちんと観られると言うことは、ツッコミを入れることなく演出面を楽しめるという事でもあり、パワフルなジェイソンが暴れまくる描写がとても楽しい。

(評価:★3)

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