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[コメント] 西部の男(1940/米)

割と没個性な正義のヒーローと、存在感の塊のような陽気な悪人。これって『渡り鳥』シリーズの小林旭と宍戸錠の関係に引き継がれてるな。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 アメリカの建国史において、悪名高い“首つり判事”ロイ・ビーンという人物が存在する。法を犯したというより、自分の気に入らない人間を片っ端から首つりにしたという人物で、法の下に人殺しを続けたという悪評と共に、この人がいたからテキサスのバルベルデ郡は安全だったということもあって、ヒーローとしてもアンチ・ヒーローとしても有名な人物。映画にはそのままのタイトルを冠した『ロイ・ビーン』(1972)があるが、この人物を様々な側面を引き出して描いたのがクリント・イーストウッドの諸西部劇映画ではなかろうかと思われる。例えば『ペイルライダー』(1985)なんかでは主人公にその側面を持たせ、『許されざる者』では逆に敵として描いてる。西部劇に独特のこだわりを持つイーストウッド自身がかなり興味を持っていたキャラであり、とても魅力を持った人物と思われる。

 そんなロイ・ビーンを描いた作品にはジョン・ヒューストンの『ロイ・ビーン』がある。そこでのロイは、破天荒ながらも一応の正義の人物として描かれていた。

 それに対し本作は、明らかに悪人として描くところに特徴がある。しかし、悪人として描いて尚、本作で描かれるロイは魅力的だ。無茶苦茶な性格をしたキャラではあるものの、自分の欲望に忠実で、それ以外の価値観を持たないって描写が見事。悪い事をしていても、それがこの場所には必要悪であることを割り切ってやってるし、しかも性格は極めつけの陽性。悪びれるところがない。実際ある程度までは主人公コールとロイの間には友情も芽生えているし、この二人がどこか似た雰囲気を持つ描写もなかなかに巧い。  コールが典型的なヒーロー像のため没個性なので、こういう強烈なキャラがいてこそ、本作は楽しく観られる。

(評価:★4)

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