[コメント] モンスターVSエイリアン(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
今やピクサーと並ぶ3Dアニメーションの雄ドリームワークスが作り上げたSFアニメーション。
「ピクサーと並ぶ」と書いたが、ドリームワークスが作るアニメは一つの大きな特徴を持つ。それは即ち“ピクサーの後追い”である。ピクサーアニメーションが公開されると、だいたい半年後に、同じような題材でアニメを作る。別段設定とかをパクってるわけじゃないけど、なんか「いかにも」と言った感じの作品になるのが特徴。これは真似ではなく対抗意識とも言われている。
今回はおそらくピクサーが『ウォーリー』(2008)を作ったことが本作を作る動機になったと思われるが、これも単に真似してSFを作ろうと言うのではなく、触発されたところが大きかったのだろう。で、何に触発されたかというと、簡単に言えば“オタク”的な部分。『ウォーリー』の宇宙船のシーンでは、そのまんま『2001年』をパクったシーンがあったが、説明は一切無く、あくまで「分かる奴だけが分かればいい」という突き放した描写にされていたものだ。本作はその部分を拡大化し、その「分かる奴だけが分かればいい」部分を徹底的に増やした作品として仕上げられている。
思うに、アメリカでは50年代のSFに一種の憧れのようなものがあって、時折これらの作品群が大挙して出てくる作品が出来るものだが、本作はそれとは知らせないように、知ってる奴だけが楽しめばいい。という割り切りで作られてるのが特徴だろう。 本作の設定自体が『妖怪巨大女』(及びリメイクの『ジャイアント・ウーマン』だし、出てくるモンスターも『大アマゾンの半魚人』であったり、『遊星よりの物体X』であったり、『蝿男の恐怖』であったり、『ブロブ』であったり。しかも画面の端々には50年代を中心として80年代までのSF作品(日本の特撮作品やアニメっぽいものも結構入ってる)が詰め込まれていたりして、ジャンル映画好きにとっては頬がゆるみっぱなしの作品に仕上げられている。冒頭シーンの『戦慄!プルトニウム人間の恐怖』のパクリに到っては、本編でも笑いものになった巨大注射器(何故かプルンジャーまで巨大化してる)まで再現。ロボット登場シーンは『地球が静止する日』大統領の宇宙人との交信は『未知との遭遇』(1977)(使われてる音楽は『ビバリーヒルズ・コップ』だが)で、大統領が出した平和の印のサインは「スタートレック 宇宙大作戦」のバルカン・サイン。スーザンが町を駆け抜けるシーンは『キングコング』(1976)(しかもリメイク版)、ロボットとの決戦場にゴールデン・ゲート・ブリッジを使ったのは『水爆と深海の怪獣』、他にも『地球へ2千万マイル』、『宇宙戦争』、『ゴジラ』(1954)、『モスラ』(1961)、『ターミネーター』に至るまで、実に様々なジャンル映画を画面のあちこちに再現度高くちりばめられている。そう言う意味で本作はアニメを観ていると言うよりは特撮作品を観ているような気分にさせられ、私のような人間にとってはとにかく楽しさ満点だった(私のような中途半端なマニアでもこれだけ出てくるんだから、真性のマニアだったら、まだまだ見つけられるだろう)。
描写がマニアックな割には、物語はかなりシンプル且つ燃える展開で作られているので、子供に対しても受けはよいだろう。主人公のスーザン以外の心理描写がやや足りない気もするが、その分スーザンの心理状態が順を追って成長する様を丁寧に描写してるので、この時間で作るにはほどよく詰めたと言えるだろう。
ドリームワークス製と言うことで、恐らくは続編も視野に入れた終わり方も結構好き。続編出ても間違いなく観に行くね。
ところで実は本作が私にとっては3D映画の初体験作になるのだが、意外に3D眼鏡は疲れることもわかった。次から注意しよう。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。