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[コメント] トイレット(2010/日=カナダ)

駄目だ。完全にツボった。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 そんな荻上監督の最新作である本作は、これまで以上に笑いの質が上がった好作だった。本作は紛れもなくコメディであり、上映中も終始クスクス笑いが周囲から起こっていた。

 ただし、設定を見る限り、本作はコメディには思えない。

 主人公のレイの視点からすれば、母を失い、一人暮らしを満喫していたアパートからも追い出され、精神的な病を持つ兄と同居せざるを得ず、さらにそこに転がり込んでくる無愛想でほとんど一言も話さない祖母。実際設定だけだと、後期ATG的なバリバリに暗い物語にも出来たはず。いや、笑いを取らずに真面目に家族のあり方を真っ正面から捉えた作品に仕上げるのが普通だろう。

 しかしながら、こんな素材を監督はしっかりと笑いで包み、コメディ作品として仕上げてくれた。

 実は予告を観た時には、多分本作はコメディだろうとは思っていたが、物語は強烈なばーちゃんが欠陥人間だらけの家族を言葉でしばきながら更生させていくものだろう。とか思っていたものだ。しかし実際に観てみたら、方向性がまるで違ってた。大体欠陥だらけの孫達はそのまま、ばーちゃんの方がほとんど人嫌い。そんなばーちゃんに振り回されっぱなしの孫達の姿しかなかった。

 しかし、それを絶妙の間の取り方によって笑いに変えてしまう監督の実力はたいしたもの。会話の間の沈黙で笑わせる技術については一流品で、それが英語でもちゃんと日本人向けに笑いが作れると言うのも興味深い。

 これからもワールドワイドに、そして日本人向けにコメディを作り続けていって欲しい監督である。

 物語は特別に大きな事件が起きる訳ではなく、ほとんど会話もなくても、いつの間にか家族の知らなかった側面に気付いていくことによって本物の家族になっていくと言うもの。実はこの手の設定の作品は見事なほどに私のツボだったりする。そのため、見事にやられた。まあ、最初からそのつもりで観に行ったんだけどさ。

(評価:★4)

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