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[コメント] ランナウェイズ(2010/米)

世代が違うしランナウェイズは殆ど知らない(ジョーン・ジェットは一応知ってる)ので、どうかと思って観たが、映画として絵は撮れている。
t3b

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







このバンド、シェリー・カーリーがあの恰好したから日本で受けた部分があるだろう。アメリカのチャートでは商業的成功のレベルじゃない。ランナウェイズ関連の音源をおさらいした結果感じた事は、どう考えてもジョーン・ジェットのほうがシェリー・カーリーより才能がある。実際ジョーンがソロになってからの方が売れてるし。ジョーン・ジェットのヒット、”アイ・ラブ・ロックンロール”はカバーだがオリジナル(男のバンド)よりノリが良い。シェリー・カーリーの視点に基づいた映画だけど、隣にもっと才能がある人間がいるので主役設定を間違えている。

才能でいえば、私は日本人が作るロックの大勢は余り興味が無い。人種的に日本人がロックを作れない訳では無いが、ノリを理解してないロックバンドが日本には多い。具体的に書くと多くの日本のロックバンドはギターやボーカルが、ノリを生み出すベースやドラムといったリズム楽器と絡んで相互作用でノリを生み出すことを余り考えていない。だからギターとボーカルがベースとドラムと分離したロック調の歌謡曲になってる。(ベースやドラムの音圧が弱くプロデュースされた音楽も多い)ノリを考えてないリズム音楽は欧米人にはダサいと聞こえる。そこのところ、ノリの悪い日本のロックバンドはちょっとは考えたらどうかと昔から考えている。(”ノリ”って何だという人は私のブログ(プロフィールから飛べる)の2016年4月26日に書いた”音楽を聞くときにどうやって良し悪しを判断するべきか”を読んで欲しい)

この映画、70年代ロック界という男社会に女性が乗り込んだ痛快活劇として企画されたと思うのだが、前述したようにシェリー・カーリーの音楽の才能がイマイチなために余りロック音楽として揺さぶられる事がなく、プロデューサーのキャラクターやバンド物語、映画としての絵の質等に頼っている。

ジョーン・ジェットはパンクの影響を受けてであると思うのだが、PETAの支持者である事を表明している。パンクは演奏者やファンが左だと思われがちなのだけれど、少なくとも私は左では無い。(もっと言及しておくと右でも保守でもリベラルでも無いし、真ん中でも無い。良い考え方をイデオロギーにかぶれてない学者や本から貰って整理する手法で判断する。)パンクに関して言えばセックス・ピストルズの無政府主義とか注目されるのだが、ジョニー・ロットンはそんなものに一切興味は無い。演じてただけ。マルコム・マクラーレン達が服を売るために戦略上無政府主義を打ち出して注目を集めたに過ぎない。個人の実感としても私より年配のピストルズのファンが無政府主義を支持していると感じた事は殆ど無い(無政府主義を支持するパンクファンが少数存在するのは知ってる)。

この映画、男社会での女性の活躍を考えて描いているのかもしれないが、こんなにハードな昔のロック社会みたいな扱いは大体の女性に関係ないし、大体の女性はPETAみたいな極端な考えの支持者でも無い。生産性を上げるために女性の社会進出が求められているが”仕事”という事を軸にどう議論を廻していくか。そこが世の中で求められていると考えているんだけど(日本式の余りに体に負荷をかける仕事スタイルだと女性が仕事し難い)、それは映画にはならなそうな話だ。(でも芸が無い芸能志望の人がどうせ不況でお金を貰えないから夢を追おうということで世の中に増えた事の危なさなんかはもっと語られて良い。)

ちなみに欧米人にノリが評価されているメルトバナナという日本の男女ロックデュオがいる。日本人女性でも音が絡むノリは表現出来るし、それが欧米人に評価され得る。殆どの日本人がメルトバナナを知らないだけ。

(評価:★3)

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