[コメント] ヒミズ(2011/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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原作のコミックを読んでいないので何とも言えないが、この舞台を被災地にする必要があったんだろうか。私にはこの映画のテーマは、通り魔殺人や理不尽な犯罪が起きる狂った社会そのもので、震災とは関係なく思えるからだ。実際、そういった犯罪は被災地で起きているわけではなく、何でもない日常の社会で起きているのだ。舞台を被災地にしたことによって、誰でもすぐ隣にある日常の狂気という印象が薄れてしまっている。
演出は暴力的すぎると思う。女の子を平気で殴り、父親は息子を殴り、暴力団は債務者を殴る。まあ、暴力団はいざ知らず、女の子はそう殴る必要性を感じないし、父親ももう少し肝心なところだけで殴るくらいにしないと、かえって印象が薄れる気がする。
この映画の傑作なところは、通り魔殺人の演出だと思う。バスの中ではそのシチュエーション、台詞などすべてが見事だし、ボートのお客が後に殺人を犯したことがニュースで流れたり、路上ライブを襲おうとする者と主人公の絡みもよくできている。通り魔殺人がなぜ、どのようにして起きるのか、非常にリアルに表していると思う。
この映画の最もすばらしいところは、そういった日常に起きる狂気をテーマにしているところだ。そして、ちょっと考えれば、その原因が狂った経済社会にあるということに行きつく。
蛇足だが、主人公が絵具で体を塗りたくるシーンなどは、絵的には面白いかもしれないが、リアリティを減らしてしまっていると思う。もっと、本当に日常の、何でもないところで起きる狂気の殺人を演出した方がより効果的だったのではないだろうか。
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