コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ソドムとゴモラ(1962/米=伊)

派手な映画だった。肉体派女優が舞い、次から次へときらびやかな衣装がお目見えし、過剰なまでのエキストラ集団が画面を埋め尽くす。ああゴージャス万歳。2003.11.4
鵜 白 舞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず、この映画を観る限りでは、悪名高いソドムとゴモラの街を全否定することは出来ないと思った。

奴隷制・同性愛・夜毎に繰り広げられる退廃的な宴。この映画で一番時間を割いていたのは、そんな悪徳のはびこる街の描写だったと思う。とても豪華で良かった。

聖書としては「そんな街だから滅ぼされたのですよ」とお説教をしているのだろう。しかしこの映画では街のシーンを見せ場にして、説教をするどころか観客を楽しませてしまう。神の怒りに触れ街が滅亡して行く様も、 当然の報いというよりは悲劇的に描かれていた。

そしてロトはあまりにも人間くさかった。

「この街はろくでもないが、今は女王の好意を仕方無く受けるしかない」と嘆いていた彼だったが、次のシーンでは派手な衣装を着てゴージャスなお家に住み「こうして女王の懐に入り内側から改革するのだ」と詭弁じみた言い逃れをする。ここでは彼の心情変化について何も語られず、たった1シーンで変貌を遂げている。これにより発言の落差が明確になり、滑稽さが倍増していた。

その後彼は神の啓示を受けるわけだが、この後の彼の変わり様も唐突だった。街の邪悪さに愛想を尽かしたというよりは、「街が崩れると神に脅されたので、街を出ますよ」 とあせっている感じ。

ラスト、妻が塩になるシーンでは嘆き悲しむ彼の姿に重点が置かれていた。 こうなると「過去の未練を断ち切らないとこんな目にあうんだぞ」と戒めるよりは、ただロトの悲しみに同情して終わる。

何が言いたいかというと、この映画は、ソドムとゴモラを耽美に描き、ロトを人間らしく描くことで、宗教色をかなり薄味にエンターテイメント色を強く出していたということ。観客を、派手な演出やドラマで楽しませて、退廃的な気分にさせてくれる映画だと思った。でもそんな気分に酔うことこそ、聖書がダメだと諭したかったことに違いない。教えに対してちょっと反抗的なんじゃないかなあ。私はそんな映画が好きなんだけれども。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)小紫

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。