[コメント] STAND BY ME ドラえもん(2014/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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国民的アニメであり、日本人で知らない人はいない名作マンガにして、現在もアニメが展開中の「ドラえもん」の映画化作。既に30作を越える映画はあるが、本作はそれらの劇場版とは一線を画する物語として作られた。
一つには、観れば分かるとおりなんだが、これまでの常識を破る3Dアニメとして作られたこと。そしてもうひとつは、藤子・F・不二雄が描いたオリジナル版に忠実に作られていること。実際本作は初期の漫画版に準拠し、ドラえもんによって将来が変わっていくのび太の姿を描いた、いわばオリジナル版「ドラえもん」であり、「ドラえもん」の基本部分と言って良い。
既にこれらの話はテレビでも放映されており、感動作が多いのだが、なんせ30年以上も毎週放映されている内の数本というレベルなので、新鮮な思いで観ることは出来た。
これまでの歴史の中でドラえもんとのび太に関わる最も良い話をつなげたものなので、当然ながら話の質は高いし、いくつかの話の改変(最たるものは未来での雪山の話で、原作では、のび太のあまりの情けなさに、しずかが「一緒にいてあげないといけない」と思って結婚を決めたというものだが、本作では過去と未来ののび太自身の連携で、きちんと決めている)も、練れたものに仕上がっていて、感動的なものに仕上げられた。
だから、本作は非常に質は高く、スタンダードな作品とは言える。
だけど、ちょっと物足りなさを感じるのは、求めすぎだろうか?
今回本作の制作を行なった山崎貴監督は、かつて『ジュブナイル』(2000)で、まことしやかにささやかれていた「ドラえもん」最終回をベースに脚本を描いたという過去がある(有名な話ではあるが、実はドラえもんを作ったのはのび太本人だったというオチの話で、あくまで噂の話)。そんなもん作った過去を持つ人だけに、もうちょっと自分の思いを作品に乗せるんじゃないか?という期待もあったんだが、自分を抑えたか、それはほとんど感じられない。誰が作ってもこうなるであろう、という非常に平均点の物語になったのが、少々不満でもあるな。もうちょっと監督ならではの個性を出して欲しかったところだ(出したら出したで無茶苦茶言うであろうことが自分でもわかってるけど)。
知ってる物語をなぞってるだけで新しさがないので、驚きはない。自分の記憶にある「ドラえもん」をなぞるだけの作業で終わってしまった。
ただ、強いて言うならば、最後の下りは蛇足だな。続編を考えてるとしても、あそこであの話を持ってくるべきじゃ無かった。
以下余計なものいいだが、本作を観ていて、一つだけ、マンガを読んでいた当時には全く気が付かなかった事実に思い至った。
ドラえもんを現代に連れてきたのはのび太の子孫で22世紀に生きる少年セワシだが、そのセワシの目的は、ドラえもんにのび太を立派に成長させることと、そして未来で結婚するであろうジャイ子との結婚を阻止するためだった。現に物語ではのび太はジャイ子ではなく、しずかと結婚することになるのだが、そうなるとルーツ改変によってセワシは生まれてこないことになる。これってひょっとして、自分の存在そのものを否定する自殺なのでは?原作では普通にその後も登場してたので、そのことに全く思い至らなかったんだけど、この作品のラストでは登場していない。そう考えると、かなり手の込んだ自殺方法って気もする…いや、でもそうなると誰もドラえもんを連れてくることが無いという矛盾も生じてしまうのだが。
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