[コメント] 殺しの烙印(1967/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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デビュー以来日活の監督として様々な映画を作ってきた鈴木清順だが、彼の名前が本当にはっきりと意識されたのは本作においてであろう。ジャパニーズ・カルト作品として有名となった本作は、虚構と現実の入り交じるストーリーは最早理解不可能で、主人公が一体何をやってるのか、何をやりたいのかさえ全然訳分からない。
だが一方ではまるで心象風景を表しているような密室や、あたかも本当に色が付いているかのような色彩感覚など、映像的センスは凄まじく、完璧に視聴者を置いてけぼりにして勝手に突っ走り、しかもそれを映像美と徹底したケレン味で見せつける。この映像を作り出せる監督は世界広しといえども、鈴木監督以外にはあり得ないだろう。現在の鈴木監督作品の原点はここにある。
ただ、本当に話自体はよく分からない。どんでん返しも入っているのだが、それはラストシーンだけじゃなく、物語そのものが意外性のあるものばかり。ちょっと目を離したら状況にあっという間に置いていかれてしまう。正直観ていてかなり唖然とさせられる。 それでも尚本作を称するならば、「純粋なるハードボイルド」とは言えるかも知れない。ハードボイルド映画は本作に限らず、雰囲気で見せる部分が大きく、あくまで主人公の男(がほとんど)をいかに格好良く見せるか。と言う部分にある。それこそ「マルタの鷹」であれ、「三つ数えろ」であれ、「チャイナタウン」であれ、物語性云々より主人公をいかに格好良く…格好悪い所も含めて全てひっくるめて敢えて「格好良い」と力ずくで言わせることに特徴あり。そう言う意味ではここの宍戸錠の姿は、まさしくハードボイルド的格好良さに溢れてる。それは炊きたてのご飯に鼻をくっつけるように匂いを嗅ぐ姿も、どこかずっこけた殺しのシーンも、それこそ座り小便する姿さえも、力ずくで「格好良い」と言わせるパワーに溢れてる。
…ただ、それは今の時代になったからこそ言えることかも知れない。この当時にこんなもの見せられたら、当然唖然とさせられた事はよく分かる。結果として「カルト映画」と呼ばれる訳だ。
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