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[コメント] ボヘミアン・ラプソディ(2018/英=米)

自分探しとエンターテインメントの融合の最適解。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 80年代。空前のポップスブームがあって、私もその時にどっぷりとはまり込んでいた。その当時では既にクイーンは過去のバンドと言われていたのだが、あの伝説の1985年の「ライブ・エイド」での圧倒的な演奏を聴かされ、以降大ファンになったものだ。お陰で今でも何曲かカラオケで歌うことが出来る。

 クイーンはいろいろ物議を醸すことがあったし、メンバーそれぞれに強烈な個性と音楽センスがあるので、一人一人のメンバーに踏み込むことも出来る。しかし本作の場合、ひたすら一つのの描写に絞った。

 クイーンそのものではなく、ボーカル兼ピアニストのフレディ・マーキュリーの生き様をピックアップしたのが本作の特徴である。

 だから実際の伝記というよりは、フレディという人物像を探るための作品と言って良い。

 クイーンの中でも最も派手でニュース沙汰にもなることが多かったフレディ。最も知られているのは髭にタンクトップの姿だが、そこに至るまでも、髪を金髪にしてみたり、かつら姿であったり、女装してみたりと、何かとファッションセンスも常人離れしていたものだ。それを本作ではアイデンティティを探る過程として描いているのも特徴の一つだろう。

 格好であれ音楽性であれ言動であれ、何事であれエキセントリックだったフレディは、その中で必死に自分を見つけようとしていた。それは複雑な人種問題だったり、セクシャリティだったり。本作はそこに焦点を当て、フレディの内面を描写する形で展開していく。

 時としてそれは実際のものとは異なることもあったり端折ったりすることもあるが、バンドの歴史の流れの中でフレディ自身がどう変わっていったのかを描こうとしたようでもある。

 フレディの心は揺れる。その揺れを観ている側も味わいつつ、同じ葛藤を味合わされて精神がぐらぐらと揺らされる。

 フレディは安定しない。結婚しても、バンドが売れても、金をどれだけ遣えるようになっても、山ほどの猫に囲まれても。

 それではゲイであることをカミングアウトしたらどうか?

 それでもやはり精神は不安定である。何をしても決して満たされることがない呪いをかけられたかのようなキャラである。

 それを見せられるので、観ている側も相当なストレスが溜まっていく。

 そこでラストの20分が活きるのだ。

 これまでフレディと共に精神的な旅を続け、いろいろなプレッシャーややるせなさを味あわされた末、ライブ・エイドにたどり着き、これまでの葛藤を超えて絶叫するフレディの歌声に同調することでカタルシスを得る。なんたる解放感。この心地よさあってこそ、本作は本当に活きてくる。

 この手法自体はありふれたものだが、そこに持って行く演出力が大変優れており、そこでの共感力も高い。

 少なくとも演出部分に関しては本作は文句なしの最高作品と言える。

 そして本作はやっと性についてエンターテインメントの中でちゃんと捉えることが出来たというのも大きな意味合いを持っている。

(評価:★4)

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