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[コメント] スリーメン&ベイビー(1987/米)

オリジナルのピリっとしたエスプリを普遍的な笑いに上手く転換出来てる。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 80年代中頃にはフランス映画のハリウッドリメイクが流行ったが、その中で最も成功したのが本作となる。

 出来を言うならば、オリジナル版がきちんとアメリカナイズされている感じで、雰囲気や引用などもうまく翻訳できていると思う。

 フランス映画をハリウッドでリメイクすると失敗する事が多い。オリジナルの監督を連れてくると、単にセットが豪華になっただけの同じ話になってしまうし、さりとてアメリカ人監督にリメイクさせると翻訳を失敗して眼の当てられないものになることも多い。

 その理由はいくつも考えられるが、それはフランス映画の恋愛観とアメリカ映画の恋愛観が異なるからだと思える。

 女好きな男という意味ではフランスとアメリカには差がある。

 言うなればそれは人として人とのつながりを求めるフランスと、“男は男らしく”生きることを目的とするアメリカと言い表すことが出来るかと思う。

 具体的に言うならば、フランス映画の恋愛というのは、お互いの気持ちのつながりの方が先にあって、行為は付随するもの。手をつなぐだけで性的関係を匂わすことが出来る。一方アメリカ映画、特に80年代以前だと、お互いにマウントを取り合い、組み敷くという行為が重要になる。

 よって恋愛観にギャップが生じてしまう。そのギャップを何かで埋めないと文化の違いだけが見えてしまい、話が面白くなくなる。

 ニモイ監督はそこで埋めるものとして、コミカル性を高めた。テンポの良い“笑い”で埋めたのが本作の面白さと言えるだろうか。

 だからアメリカ人にはあまり受け入れられないようなフリーセックスを描いていながら、ちゃんとあるべき所に着地できている本作は非常にバランスに優れている。監督の巧さは光る作品だ。

 正直、『赤ちゃんに乾杯!』であれ本作であれ、観た当時はピンとこなかったんだが、それは結局日本的価値観から出られなかったからかとも思えている。映画も数観りゃ国毎の雰囲気も見えてくる。今にして、やっと本作の面白さが分かってきた。

 元はオリジナル版のコリーヌ・セローが監督する予定だったそうだが、フランスとシステムが全く異なるハリウッドのスタッフに腹を立ててしまい帰国してしまったため、アメリカ人監督を探し、コリン・ヒギンズ、マーク・ライデル、アーサー・ヒラーの三人に監督依頼がなされたが、全員に断られてしまい、そこでレナード・ニモイに話が回ってきたのだとか。

 ニモイは丁度一年前に『スター・トレック4 故郷への長い道』がヒットしたこともあり、コメディなら彼という機運が高まっていたからだろう。

(評価:★3)

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