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[コメント] ROMA/ローマ(2018/メキシコ=米)

映画ビジネスの流れを変えるエポック。アート系映画制作の流れが変わるかもしれない。
すやすや

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今どき珍しい一般的な観客を無視して、全力でアートに振り切った作品。 故にハイコンテクストで映画教養が高い人じゃないと理解できないし、普通の人なら寝る。

これは商売として成り立つのか?と思ったが、これが配給ではなくて配信で考えると腑に落ちる。

目的は賞取り狙いなのかと。賞を取れば、タダで宣伝してくれるし、中途半端なエンタメ作品を配信するよりもブランド力が上がる。Netflixやるな。 そしてそのオーダーをまっとうし、ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した、アルフォンソ・キュアロン監督はエライ。賞取りに行けと言われて、その通りに取れる監督が何人いるだろうか。 この流れが上手くいくならば、通常の配給にのらなそうなアート系作品が作られる機会が増えるかもしれない。

全力で賞取りに行け!というマーケティング戦略を受けてなのか、アルフォンソ・キュアロン監督は、異常なまでに細部へ執着を見せる。

タイルの水に映る天窓からの風景に、飛行機が横切るカットをみて「え?マジで?この絵のために飛行機通過のタイミング待ちしたの?」と驚愕。どうもデジタル合成を多用しているらしいので、真面目にタイミングをとったとは思えないが、だとしてもこのカットのために別々に撮影して合成しているだけでも手間。

映像だけでなく、テーマの見せ方も批評家向けにハイコンテキスト。 クルマ(キャデラック)で奥さんの心象風景を表現するところなど高度過ぎる。 クレオを病院に連れて行く道すがらで、大きなクルマを持てあまして、側面を盛大にこすってしまうのだが、これが社会に出た女性の軋轢を表現しているんだろうけども、そんなことすぐに分かるかい! そして別居を決める奥さんは、クルマを小型車に買い替え、キャデラックへの決別として旅行に出ると…。

海の長回しがこの映画のハイライトなのだが、「ワンシーンワンカットなのに、太陽の光り具合がスゲー!」と思ったら、これも合成しているそうで。空の映像を別撮りして合成しているとのこと。合成しているとはいえ、ここの絵づくりの完成度は凄い。普通の監督はここまで光の絵作りにはこだわらないだろう。

配信ビジネスが作品の作家性に影響を与えるという意味でこれはエポックな作品かもしれない。

(評価:★4)

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