[コメント] キャッツ(2019/英=米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
T.S.エリオット原作の、ミュージカル史において燦然と輝く超ロングランミュージカルとなった「キャッツ」。初演は1981年で今も世界各地で上映されているというのだから、化け物のような作品である。いつ映画になるかと思ってたのだが、40年もかかってしまった。
監督のトビー・フーパーは先にやはり傑作ミュージカルレ・ミゼラブルも映画化させており、それが見事な出来だったので期待は高かった。それにこの人だったら大丈夫だろうという安心感もあった。
本作は舞台劇の映画化となるが、その変換に大きく手を加えた部分がある。それが猫たちの描写についてである。
舞台では登場人物達は猫メイクをして踊り舞う。だが映画はそれだけでは駄目だと考えたか特殊な演出を加えたが、それはCGで一種のリアルな猫の描写を目指した。
ただ、それは相当残念な結果しか残せなかったようである。
予告を観た時も、これは相当に不気味だと思っていたもんだが、実際に映画を観てみると、不気味というか、昔あったコンピューターグラフィックスの人物がヌメヌメと動く描写を思い出してしまった。いわゆる「不気味の谷現象」(wiki)に入り込んでる描写である。
リアルにする方向性が間違っていた。ほぼフルヌード状態で妙にリアルな猫人間がヌルヌル動くと目のやり場に困る。
更に肝心な踊りのシーンがどうにも退屈。CGとワイヤーアクションの併用で見栄えはするのだが、舞台では華やかなコーラスが普通のBGMになってしまって派手さを感じないし、基本一人で踊る踊りは間延びしてしまう。
結果として踊りのシーンで激しい眠気に苛まれる。
私はこれまで映画館で寝たことは一度も無いというのが自慢ではあるが(ビデオでは何度もあるけど)、それでも意識を失いかけたことは何度かあったもんだ。ここでその経験が加わった。実際ダンスシーンの中で何度か意識に空白ができていたので、一瞬眠りの中にはまり込んでしまっていたらしい。
と、言うところである映画との共通性に気づく。
一夜限りの饗宴の中で、一人一人代表が踊り回り、選ばれた者がこの世とあの世をつなぐご褒美を得られる。そして踊り手は半裸。
なるほどそうか。この作品は実は『死霊の盆踊り』(1965)のリメイク作品だったんだ。そう思うと凄く納得いった。内容的にもたいして変わりがない。
ただ、極めて低予算作品だった死霊の盆踊りと較べると、金かかってる分、本作はかなり悲惨な部類に入るのではないかと。恐いもの見たさで鑑賞するのが正しい気がする。
と、ここまで本作のマイナス面だけ書いてみたが、プラス面が全くない訳ではない。確かに観てる間に眠くなるけど、それが凄く心地よかった。音楽に包まれ心がふわっと軽くなる感触。これまで味わったことのない多幸感に近い。
まるでドラッグ。寝るためだけにもう一度観に行きたいとさえ思ったくらいだ。本作は絶対に音響の良い映画館で複数回観て、それで寝てしまうことを絶対お勧めしたい。幸せな気持ちになれると思う。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。