[コメント] 初恋(2019/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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現代の職人監督三池崇史監督が作る作品は多岐にわたるが、その中で最も個性が出るのは現代劇で、更に裏社会の暴力描写主体の作品という特徴がある。監督が作る暴力映画は単なる暴力ではなく、非人道的でサイコパスなキャラがわんさか出てきて、人の尊厳とか全く考えない無茶苦茶なもので、この監督にしか作れない個性的なものが出来上がる。 本作はまさにその三池監督の魅力が爆発したような作品になってる。
メインストーリーそのものは大変単調で、暴力団と警察のどちらからも追われることになった男女の主人公が逃げ回るのと、反撃するという、実に単純なものだ。
しかし、本作の面白いのは主人公の側ではなく、主人公達を取り巻く悪人の側の魅力になる。実際本作に登場するのは主人公の二人を除くとみんな悪人ばかりだ。主に金銭関連だが、自分が儲けを独り占めしようとしてる奴らばかりだし、儲け話を独り占めするために人を殺すことをなんとも思ってないサイコパスだらけ。
それぞれが自分の都合だけで行動するため協調が全くなく、あっという間に人間関係が破綻し、企みも全部ばれる。そしてばれたらばれたで開き直って周囲を巻き込んで自爆しようとする。どうしようもない刹那的な奴らばかりで、よく今まで生きてきたもんだというレベルのキャラばかり。
だから物語そのものが行き当たりばったりなのだが、ここまでぶっ壊れたキャラが次々出てくる映画作れるのは三池監督しかおらんし、下手に物語の整合性を考えるより、ぶっ壊れたまま突っ走る方が三池監督らしい。これだけ暴れまくる映画なので、観ていてとても心地良い。
キャラも濃い。当初は主人公二人こそ、そこそこまともだが、周囲のキャラがぶっ壊れていくので、それに合わせて本人達も壊れていく過程が面白い。何よりその狂気を引き出す周囲が凄い。準主役の 大森南朋と染谷将太も良い役やってるけど、ベッキーにここまでの演技引き出したのが凄い。あまりのはまりぶりに、これからこう言う役しか回ってこないんじゃないか?と心配になるほどの壊れた暴力機械っぷり。ベッキー観るだけでも本作を観る価値があろうってもんだ。
観ていて気持ちいい。それだけが本作の評価の全て。そんな映画があっても良いのだ。
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