[コメント] ミッドサマー(2019/米=スウェーデン)
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『ヘレディタリー 継承』でスマッシュヒットを飛ばしたアスター監督の新作はやっぱりホラーだった。前作が一風変わったホラー作品だったが、本作もそれに劣らず変わった作品に仕上がってる。
本作の最大の特徴は“明るさ”に尽きるだろう。
基本人が怖がるのは暗闇であり、闇を払う日光は救いを意味することがホラーの定番である。しかしながら本作は太陽の沈まない世界の出来事。全く闇がない。最初から最後までずっと陽光の下で話は展開していく。これまでのホラーでは全くなかった演出だし、そもそもそれを考えつきもしない。
お陰で大変不思議な雰囲気の話になった。
基本的なストーリーで言えば、本作は大変平板な物語である。作品を通してちょっと変わったお祭りシーンが延々続くだけの話となる。周囲の人たちが訪問者を受け入れ、ふんだんにサービスする。基本みんな和やかとなる。こちらは最初からホラーだと身構えているので、最初から不穏な雰囲気を感じ取り、その笑顔の奥にある悪意を感じ取ってくる。
その和やかさがずっと続くのだが、終始和やかなお陰で、観てる側は大変疲れる。
正直ホラーだったら、もう少しサービス心旺盛にショックシーンを次々に出してくれた方が気持ち的にはすっきりするのだが、とにかくただ和やかに迫ってくるのでどうにも落ち着かない。
時折ショックシーンは存在するが、次の瞬間にはこれまで通りの和やかな雰囲気に飲み込まれてしまい、ますます落ち着かない気分にさせられる。
怖いようなそうでないような、不安定な心を抱いてずっと見ていくことになる。正直苛々していく。
主人公達の仲間達が徐々に減っていき、どうやら殺されているらしいことも分かってくるのだが、その真相は誰も語らないので、そこも苛々する部分。
その苛々が解消するのかというと、実は最後まで解消されることがない。ずっと苛々した気分を抱えて、最後までモヤモヤした気分で終わる。
掻きたいところに手が届かないというか、「もういっそ化け物出てくれ!」と言いたくなる展開にすっかり疲れてしまう。その落ち着かない心こそが本作の最大の特徴だと言えるだろう。これこそが本作のユニークな部分で、これがあるからとても面白く感じるのだ。ラストでちゃんとネタバレするのも、ようやく腑に落ちたという感じですっきりした気になるのもホラーとしては不思議な感触だ。
これに似た作品と言うことを考えると、『ウィッカーマン』(1973)が近いように思えるが、そう考えると、物語の展開や設定とかも結構似たように思える。『ヘレディタリー 継承』が『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)を参照したように、本作もそこからかなり継承してるのかもしれない。
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