[コメント] 恋人までの距離〈ディスタンス〉(1995/米)
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これは確かに恋愛劇。極端に悪く言ってしまえばラブ・アフェアの話。だけど、本作は他の恋愛劇とは異なり一風変わった作風で、とても魅力に溢れてる。
理由として考えられるのは、本作の場合、全て恋愛が言葉で表されているからなのだろう。会話と微妙な間だけで恋愛劇を作り上げてしまった。いや、途中までいつこの二人は盛り上がってくるのかなあ。とぼんやり眺めていたのだが、全編がそのまんまで、しかもさらっとラストで分かれてしまうシーンまで観て、唖然としてしまった。てっきりこれから本当に盛り上がるのだと思っていただけに、思い切り肩すかしを食って、次の瞬間思わず吹き出してしまった。いや、やってくれたもんだ。
しかもその会話というのも、恋人が愛を語るのとはまるで違う。普通恋人同士の会話というのも、うわさ話やお互いの趣味の話。話題の接ぎ穂に困ると、突飛な会話が飛び出したりするものだが、普通そう言ったものは夾雑物として恋愛話ではカットされる。ところが本作の場合はそう言った他愛もない言葉遊びこそが主題であり、そう言う会話を続けているうちに徐々に、会話で気分が盛り上がっていく。丁寧と言えば丁寧だが、普通じゃやらないよ。
丁度それにホークとデルピーという、どちらかというとナイーブな存在感を持つ二人だからこそ成り立った作品ではあるんだろう。同じ感性を持つことが分かっていても、まさか本当に惹かれてるんじゃない。と思おうとして、結局やっぱり惹かれてしまう。その辺の微妙な立ち位置が小気味良い。
会話で話が成り立っているだけあって、会話やその間にも丁寧に工夫が見られる。何気ない言葉であっても、それが「いかにも借り物」と思われるものもあれば、「お、これは本音?」と思わせておいて、慌てて前言を取り消させるあたり、観ている側にも様々な解釈をさせてくれるあたりはなかなか配慮に富んでるというか、狙ってるというか…狙ってると言っても、ここまでやれば立派だよ。台詞だけでウィーンを描写するシーンまであり、本当に言葉を大切にした作品であることが分かる。
かなり好みの作品だが、お陰でリンクレイター監督はすっかりファンになってしまった。
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