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[コメント] 花咲ける騎士道(1952/仏=伊)

なんだこれは?フランス版『うる星やつら』か?むっちゃ面白い。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 まず本作は、ストーリーがあまりにも荒唐無稽且つ無茶苦茶。主人公のファンファン自身が一つのことを考えると、他の何も考えられないほど視野狭窄なキャラクタで、自分では大まじめなつもりで突拍子のないことばかりしているし、実際に人死にが出ている戦争を指揮する人間達が無能揃いで、あまりに戦争描写が馬鹿馬鹿しい。しかし、それは逆に本作の魅力となっているのが面白いところ。主人公ファンファンの周囲を取り巻く状況は大変複雑なのに、肝心のファンファンの思考形態があまりにも単純(要するに女!と言うそれだけの価値判断しかない)で、その単純さのお陰で、突拍子もないことばかりが起こす。しかもそれを華麗な剣さばきと運の強さ、人間的魅力で全部するするとすり抜け、やがてハッピーエンドになってしまう。観てる側からすると、次の展開が全く読めず、常にはらはらし通しだし、それで最後は大満足な気持ちにさせてくれる。行き当たりばったりのように見える物語がこれほど魅力的に作られているのも、一種希有な例だろう。ラストは特に唖然。「あるかよ!こんなの」と、思わず画面に向かってツッコミを入れてしまった。

 制度とかしきたりとか、「〜ねばならない」式の押しつけに徹底的に反抗し、そういうものを笑い飛ばすと言うのは、フランス映画の特徴なのだろう。それがエスプリって奴です。指揮官が無能な人間ばかりで、こんなのに戦争の指揮をさせるのか?と言うのも、戦争なんて本当に馬鹿馬鹿しいものだ!と言う宣言のように思えてくる。そこが凄く爽快(日本における岡本喜八作品を観てる気分にさせられた)。

 リメイクの方も物語の上では一応同じなのだが、本作は本作のみの魅力がある。

 ここに希代の名優ジェラール=フィリップという人物を得たこと。

 この人ほど華のある役者は全映画史を通してみても数少ない。これだけ無茶苦茶なことをしていてもなんか全部許せる気になってしまうし、設定云々を言うこと自体、無意味な気分にさせてしまう。ほとんどこの人一人で画面をさらってしまい、他のキャラクターどころかストーリーさえどうなっても良いって感じ。

 フィリップは元々繊細な役柄が多く、アクションよりは内面の方が重視されるキャラ設定が多いのだが、動きも実際はかなり良く、大変なアクションもスタントなしに軽々こなす実力を持っている。そのアクション部分が本作では極限まで強調されていた感じだ。ここでの華麗な剣さばきと言い、乗馬の技術と言い、彼の持つもう一方の魅力が極限まで演出された作品と言って良かろう(ただ、フィリップ自身はこの役柄に不満があり、撮影の間ずっと監督と衝突し続けたらしいが、出来上がったフィルムを観てフィリップ本人もこれで良かったことを認める)。

 ただ本作には一つ大きな問題がある。これを観た後は、フィリップばかりしか記憶に残らないという(笑)。あまりにも立ちすぎたキャラというのは、これはこれでかなり問題があることを思わされる。

 結局本作はフィリップのキャラのお陰で成立した作品だが、逆にそのキャラ描写が強すぎて逆にそれしか記憶に残らないという弊害を生んでしまった。

(評価:★4)

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