[コメント] 黒衣の花嫁(1968/仏=伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
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コーネル・ウールリッチ原作の映画化。たまたまこれ昔読んだことがある小説だった。とても救われない物語だったことが強烈な印象として残った作品だった。いや実際その小説のことは忘れていたし、タイトルも忘れていたが、この作品観始めた時に突然のデジャビュが起こり、「ひょっとしたら?」と思っていたら案の定知っている物語だった。この時の体験は非常に鮮烈で、完全に記憶の底にあった物語がシーン毎に思い出されていく。記憶って不思議なものだ。と思ったものだ。
それで記憶のすり合わせをしていくと、物語自体はやっぱり原作の方が上とは思う。あってほしかったエピソードがごっそり抜けていたり、犯人を特定する手法に違いがあって、かえって改悪になってるんじゃないか?と思われることも多々。そもそも物語もかなり無茶苦茶な感じ。推理作品としてであれば、失敗作と言っても過言ではない。 だけど、本作は推理ものとして観るべき作品ではなく、ひたすらジャンル・モローの際だった美しさを観るための作品と思って観ると、実に味わい深い。最後の瞬間まで唇を結び、全く感情を出さずに殺人を繰り返すその姿は見事の一言。そんな彼女が時に自分がしてしまったことを振り返って唇を震わせたり、最後の最後で自分のやって来たことが無意味だったと分かり脱力するシーン、そして最後に微かな笑みを見せるシーン。全て彼女の演技力に掛かっていた作品だった。
結局モローをどのように見るかで本作の評価が分かれることになる。彼女の演技力にはまれるなら評価は上がるし、そうでなければ駄目作品になる。トリュフォー作品にしてはちょっと落ちるなあ。
私としてはモローに対する思い入れはそれほど高くないので、この程度の点数となる。似たようなパターンでは『女囚701号 さそり』の梶芽衣子が良かったなあ。
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