コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] フェイス/オフ(1997/米)

問題が一つあります。トラヴォルタもケイジも、完全に善良な顔つきは無理だったようで、観てる内に、どっちが悪役だ?と思わせてしまうこと…ひょっとしてこれも演出なのかな?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 普通考えつかないような設定を作り出し、それをアクションに仕上げるのはやっぱりハリウッドよりも香港だな。あらゆる物語を受け入れ、パクリだとかなんだとか色々言われてもちゃんと一本の映画を作ってしまう。ハリウッドとは柔軟性が違う。

 …と言うことで、本作はやっぱりウー監督の持ち味が最も良く出た作品だと言えるんじゃないか?

 下手すればパチもんのB級作品になってしまいそうな素材を単なるアクションに終わらせる事無く名作に仕上げたのは決して二大スターの競演というだけではない。この作品にかけた演出がもの凄いから。

 ここでの演出方法は他のウー監督作品と較べても白眉。それまでのウー監督が培ってきた演出を総動員させたのみならず、他の名作からの引用をも含めて(冒頭の回転木馬の惨劇シーンなんかはそのまんま『見知らぬ乗客』(1951)からだろうし)それを見事に昇華させている。二丁拳銃とコートの跳ね上げシーンとか鳩なんかは今でもやってるけど、本作ほどスローモーションと鏡の使い方が上手かった作品はなく、演出に関して言えば最高の作品。ケイジとトラヴォルタが巨大な鏡を挟んで銃を向け合うシーンなんかは鳥肌が立つほど。鏡からこちらを向いてるのは宿敵の姿なのだが、それが自分自身だという葛藤を感じさせる。これをじっくり観させることで、「自分は一体何をしようとしてるのか?」という根本的な問題を僅かな時間で考え込ませてくれる。しかもこれが怒濤の銃撃戦の間になされているのが凄い。この一連のアクションシーンだけでも最高の作品といえるだろう。後半のチェイスシーンをもう少し短くすればピリっと締まったんだけどね。

 それにキャラクタが本当に良い。トラヴォルタはヒーローと悪役のどちらも出来る柔軟なキャラで、良い具合のはまり具合だったが、何より“自称”ヒーローのケイジは、本当言うならヒーロー役よりも悪役の方が似合ってると常々思っていたのだが、これほどはまるとは。ケイジ自身のプライドもちゃんと取っているところが心憎い。冒頭の邪悪な笑みを浮かべながら「ぴぃぃ〜ち」なんて言う姿は、いっそ趣旨替えして、こっちの路線に行った方が良いんじゃないか?と思ったくらい。

 それと顔が変わっただけで別人になれるものでもないんだけどね。その辺の問題があって最高得点は入れにくい。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。