[コメント] キューポラのある街(1962/日)
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邦画における名作中の名作で、吉永小百合の出世作となった作品。ここで清純派少女を演じたことが、後々までイメージを固めた。
内容的には進学問題や組合問題、更に朝鮮人との交流などの当時の社会状況が織り込まれた社会派的作品なのだが、ドラマ部分のバランスの良さのお陰でエンターテイメントとしても充分見応えのある作品に仕上がっている。一説にはアイドル映画とされているようだが、内容を観たらそんな言葉でくくれるようなものではない。浦山桐郎監督の実力ってところだろうが、これがデビュー作と言うのは結構びっくり。手慣れたタッチだな。
父の辰五郎、娘のジュン、息子のタカユキ、三者三様に物語は紡がれ、それぞれが社会と対峙している。父は圧力的な会社に対する組合の問題として。ジュンは進学問題と、労働について、そして恋の感情について。タカユキは幼心に在日問題として。それらが一応なりとも劇中で決着は付いているが、その辺はどうかな?とちょっと首を傾げる部分もあるが、この時間でこれだけまとめたのだから良しとしたい。
一つ気になったのは、父の位置づけについて。昔気質の性格で、それがジュンには我慢できないところがあり、徹底的に反発する訳だが、そこについては決着が付いてない。なんかその部分だけ出来損ないの小津作品っぽくなってしまった。
本作は確かに社会派的内容を持っていて、今となってみると、それに啓蒙されたか、現代の社会においてある程度解決した問題もある。逆にそれによって新たな問題が生まれてもいるのだが…
良い作品であることは認めるけど、その辺がちょっと鼻についてしまい、点数は少々低めに。
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