分からない時は辞書を引く． 裏切る． (1)味方にそむいて敵方につく．▽なかまを―． (2)約束や信義にそむく．▽友情を―． (3)予想と反対の結果を招く．

ピエールは女に貢ぐため（２）約束や信義に背くことをして、（３）予想と反対の結果を招き、国外に追放されモロッコの外人部隊に流れて行く、これがこの映画は始まり．人を裏切った結果は、自分を裏切ることになったと言っていいのかしら．

順に裏切りを観て行きましょう． フローランスがピエールと一緒に行くのを嫌がる、これは、この映画の最後にまで及ぶ裏切りと言えます． 売春宿のおやじクレマンが、店の女の子に手を出すのは妻ブランシュへの裏切り．ブランシュは夫の浮気を知りながら何も言わない．無言が示す夫婦仲の悪さ、それは裏切りの行為を醸し出し、イワノフとピエールの友情の背後に、イルマとピエールの愛の背後に、なんとも言えない妙な雰囲気を漂わせている、と言ってよいでしょうか． 続ければ、クレマンがイルマに手を出し、ピエールはクレマンを殺すことになる（信義に背く行為）．そして、偵察に出掛けるとき、ピエールは志願するのを躊躇い、イワノフは死ぬことになります．

さて、偶然フローランスと再会したピエール．再会したフローランスとの会話の中で、未練に染まった愚かな自分に気づくと同時に、フローランスの自分に対する裏切りに気づき、更に同時に自分自身の、イルマの愛に対する裏切り、そしてイワノフの友情に対する裏切りにも、気づいたのね．

この映画で描かれた裏切りとはどの様なことでしょう． イワノフの写真ののった新聞、革命家、芸術家、殺人犯？、彼の過去は分からない．外人部隊とは彼に言わせれば、過去を帳消しにする権利を買うことであり、彼の死は、その過去に人として許されないもの、生きているに値しない愚かさが存在することを示している． 再び外人部隊を志願したピエール、送り出すブランシュのトランプ占いは、裏切り、その行為の愚かさを現しているのね．