[コメント] 日曜日のピュ(1992/スウェーデン=デンマーク=フィンランド=アイスランド=ノルウェー)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
実は私が覚えているシーンはほとんどない。
覚えているのは、死を前にした父親がベッドから息子(主人公)に手を伸ばすシーン。 息子はその手を取らない。傍らにいた母親が「最期なのにどうして」とさめざめと泣く。 しかし主人公は悪びれる様子も無く、部屋を後にする。 その直後にとても美しい音楽が流れ、回想シーンが始まる。 回想シーンでは森で迷子になっていた主人公が父親に見つけてもらえて、父親の腕の中で安心して泣きじゃくっていた。
現在の陰湿な部屋で不仲な親子の様子と、対照的な回想シーンの愛に溢れた美しさ。
観終えた私はまず主人公に対して不満を感じた。 なぜあの手を取らないのだ、と。お父さんが可愛そうじゃあないか、と。 嫌な映画だと思った。 ただ嫌いな映画と一言で片付けてしまうには、回想シーンがあまりにも美しすぎた。
あれから時が経って、私はこれまで普通の仲だった親とあわや絶縁という状態に陥った。 その時ふとこの映画を思い出した。あのシーン。伸ばした父親の手を取らなかったシーン。 ああもしかしたらと思った。
映画では語られない深い溝があの父子にはあったのだろう。 人生では容易に修復できない溝が出来ることもある。 他人ならばそこで縁を切って終わっても、親子の縁は容易に断ち切れない。 けれども元には戻れないというもどかしさ。
主人公は何を思って父に会いに行ったのだろうか。 本当は父の手を取りたかったのだろうか。 複雑な思いの中で思い出はより輝いたのだろう。
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