[コメント] つばさ(1927/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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元航空兵の作家ソーンダーズの脚本を、これも従軍経験のあるウェルマン監督が仕上げた作品で、栄えある第一回アカデミー賞受賞作(ちなみに第一回目だけはアカデミー作品賞は二作あり、『サンライズ』と分け合っている)。この作品により、ウェルマンは一流監督となり、本作は“世界初の空中映画”とうたわれ、航空映画の先駆け的作品とされている。
この作品には驚かされた。この時代の映画で現代にまで残り、私たちの目に触れる作品というのはそう多くなく、その内容も、主に文芸大作か、パントマイムものばかり。てっきりこの時代の作品とはそう言うものばかりだとばかり思っていたのだが、本作は目から鱗である。
こんなしっかりエンターテインメントしてる作品だってちゃんと作られてるじゃないか!
本作はとにかく色々と詰め込んでる。男同士の友情。ラブロマンス。そして三角関係、四角関係のどろどろした人間関係。ラブコメディ。そして何より壮大な空中戦。サイレントの作品だから、それらは言葉では表せないのだが、その分オーバーアクションがますます漫画っぽくて良い。ここまで娯楽に徹底した作品って、この時代にもちゃんとあったのだし、おそらくこういう娯楽作の方が多かったのでは無かろうか?それでも時代を経ても残るのは結局文芸作品ばかりになってしまい、こういう作品は日の目をあまり見ることがないのかもしれない。
ラブコメの部分は割合陳腐な感じはするが、現代でも充分に楽しく観ることが出来る内容だし、どたばた三角関係が続いている中(もちろん渦中の人達はシリアスだが)、決して振り向かれずに、それでもジャックのそばにいようと奮闘するメアリの姿はほほえましいものがあるし、しっかり伏線も消化されている。実際、これこのまま現代劇もしくはSFに直したとしても充分観られるだろう(大体、どこかでこの物語にデジャビュを感じていたのだが、『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)はほとんど同じ内容だったと言うことに気づいた。)
それに空中戦が壮大だ。第二次世界大戦後の世界じゃないから、なんせ飛行機の速度が遅い。一生懸命スピードを出そうとしている描写も微笑ましいし、顔とかが全部外に出ているので、風に向かって叫んでる姿も良い。何より飛行機に乗りながら腕を振り回して威嚇するようなパフォーマンスが出来るのは大きな強みだった。現代で描かれる空中戦はスピード感はあっても、こういう真似は出来ないから、失われた大切なものがここには入ってるような気にさせられる。
古い作品だが、現代でも充分通用するエンターテインメント作品として、機会があったらごらんになることをお薦めしたい。(もちろん初のアカデミー受賞作という事実も重要だが)。
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