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[コメント] トレインスポッティング(1996/英)

しかし、これがオシャレと見られていたとは、当時の日本も相当に変。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 「麻薬常習者」という意味のトレイン・スポッティングを題名に冠した作品で、ひたすらドラッグ漬けの若者の日常を描く作品。そのやるせない気持ちを上手く描き、それまで長いこと低迷にあったイギリス映画復活を強くアピールする。

 イギリス映画と言えば、1950年代はハリウッドの作品でさえ多くはイギリス出身の監督が撮り、アカデミーのノミネートは軒並みイギリス作品というパターンが多く見られたのだが、70年代の激動の時代にイギリス作品は完全に乗り遅れた。実際の話、国自体が斜陽になっていたのだが、無理して大作指向だったのも災い。次々に大作がコけ、すっかり映画も下火になっていった(007シリーズとかは続けられていたが)。80年代に至ると、一種のポップカルチャーの担い手であったのに、映画に関しては本当にまともなものが作られにくくなってしまった。

 そんな中、ようやく“現在”そのものを描く作品が登場した。

 ここに登場する人物像は、ボロボロになったイギリス経済の、そのまま下層の人間たちの生き様そのものであり、そこに誇張はあっても、悲惨さを感じさせる作品に仕上げられていた。

 …はずなのだが、少なくともこの当時、そういう受け取られ方はされていなかった。むしろこれをまるで進んだアーバンライフを示すかのように、「オシャレな作品」として紹介されていた。

 宣伝文句に煽られたこともあって、「オシャレってどんな感じなの?」という軽い気持ちでビデオレンタルして…気持ち悪くなった。ヤク中のどーしようもない若者がグダグダやってるだけの作品のどこがオシャレなんだよ。途中出てくるトリップした悪夢描写には酔ったし、子供を殺してしまって更に薬を求める描写は吐き気さえ覚える。そう言う悲惨さを出すのが本作の狙いだったし売りだったのだろうとは思うのだが、そこで躓いてしまった以上、どうしても入り込むことが出来ず。

 結局悲惨な現実を、夢を見ることで回避しようとしているだけの話としか受け取ることが出来ず。それでも悪夢の話は好きなので、点数はそこそこあげられるのだが…最初に観た本作がボイル監督に躓くきっかけになってしまった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)きわ ボイス母[*]

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