[コメント] PERFECT BLUE(1997/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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インターネット・メールを使ったなりすましを、アイドルへのストーカー行為・二重人格と絡めたテーマは面白い。1997年というインターネット黎明期として、この観点は鋭いと思う。 アイドルグループからの脱退、女優への転身をきっかけに、脅迫やストーキング行為が発生。本人も本当はアイドルであるべきだったかもという幻覚を見るようになり、追い詰められていくというストーリーだった。流れは若干強引だが、まあホラー・サスペンスを短い尺に抑えるならまあこんな前半展開も仕方ない。だが、ストーリーの結末を締めくくる後半は消化不良。操られているオタク連中はともかく、犯人の動機もはっきり描かれない。ただの解離性障害です、と。アイドルを強く思うあまり、解離性障害になり、本人の殺害まで企てちゃったという話を聞いて「うん、そうだね。それは仕方ないよね」という納得感は無かったなー。 回想シーンとも、ドラマの撮影ともつかないシーンが重なり、混乱を生んでいる。たとえばピザ屋の配達店員を装った殺害シーンなどは、スキニーな主人公自身が殺害現場にいるかのような描写がなされているが、事実としては太ったマネージャの行為によるものなので、もちろん混乱を生むための作り手の意図によるもの。だけど、この混乱いるか? 謎を効果的に演出して引き込む効果というよりもむしろ、ストーリーが追いにくくなり、観客を離反させるというデメリットのほうが大きいように思った。 病院にお見舞いに行き、いろいろ振り切った主人公がラストシーンでみせた「私は私」という笑顔は、結局カタルシスを十分に生まなかった。
では、そういったストーリーを表現した手法はどうだったのか? マネージャーが主人公の家に上がり込み、殺害を企てる鬼気迫るシーンや、レイプシーンでの声優の演技力などは確かに素晴らしかった。 が、それ以上にそもそも中途半端に写実的なアイドルキャラクターのデザインや、「いやいや、20歳でこの声はないっしょ」と思わず突っ込みたくなるような年齢層の高い声優選定、いかにも悪者でございますというキモオタのキャラクターデザインなどなど、そもそもの設定のズレがあり、折角の演出力が活かされていなかった。 レイプシーンも執拗に描いているが、あんあに長尺にする意味はあったのか? 謎もとけないまま、シーンの表現も夢オチっぽい加工がされて現実か妄想かわからなかったり、はてながいっぱいのまま残虐シーンをひっぱられても困ってしまう。
あと、イベント荒らしをして、即轢き殺されたギャング連中は一体なんだったんだ?(笑) 主人公を守るために殺人、始めましたという意味をもつ登場人物だが、全国各地のイベントに4人で出かけて行ってイベントを荒らして喧嘩し、あげくひき逃げされるとは・・・雑な設定で死んでいった彼らのご冥福を祈り、レビューの締めとしたい。
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