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[コメント] ニュールンベルグ裁判(1961/米)

武器で戦う戦争が終わっても、漢たちの戦争はまだ終わってなかった。多分、それは今でも尚…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 裁判というのは映画になりやすいが、それは主に逆転劇としてであり、こう言った結果の分かった裁判は違ったジャンルになるのかも知れない。むしろこれはヒューマン・ドラマとしての見応えを主張すべきだろう。

 戦犯裁判は重要だったが、当時のドイツというのは極めて複雑な状態にあった。ドイツ国内は連合国内でもアメリカを中心とした西側と、ソ連を中心とした東側に分断されようとしていたし、ベルリンに至っては後の東ドイツの中で二つに分けられようとしていた。後の冷戦構造が先にドイツで始まっていたわけだ。

 戦犯裁判での中心となっていたのは西側であり、東側の防波堤としてドイツを位置づけようとしていたため、後の西ドイツへと変わっていくドイツへの気兼ねがどうしても出てきてしまう。

 実際の話、処刑された者を除いては、どれ程重罪の判決を受けた者でも10年を待たずに釈放されてしまっているのが事実。

 これ程の逆風の中で、しかも自分の敬愛するヤングス(バート=ランカスター)に過酷な刑を処すヘイウッドスペンサー=トレイシー)の姿は“漢”そのものと言った風情。自分の中にある本当の価値観というものをしっかりと貫いた男の姿がそこにはあったし、どれ程詭弁を弄しようとも、何としてでもヘイウッドを守ろうとする弁護士のロルフ(マクシミリアン=シェル)の姿も又、鬼気迫る迫力があった。それに何よりヤングスの毅然とした態度。全て格好良かった。マレーネ=ディートリッヒとの枯れたラブ・ストーリーも当時のドイツの状況説明には丁度良かった。オープニングとエンディングのドイツ語の歌は心に沁みる。

 映画としてはやや長目だし、極めて重いが、それでも歴史認識を学ぶには格好の素材。

(評価:★5)

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